研究実績の概要 |
造血器腫瘍である急性骨髄性白血病は、標準的な治療により約40%の治癒が望まれる。しかし残りの60%に相当する難治性白血病に関してはさらなる病態の解明が白血病の克服のために必要である。Notchシグナルは細胞の発生・分化において多彩な機能を有し、がんに関してはT細胞性リンパ性白血病の約50%にNotchの活性型変異を認めることが報告されている。また造血器腫瘍においてNotchシグナルが腫瘍化と腫瘍抑制の2面性を持つことが報告され、我々の研究グループはNotchシグナルが急性骨髄性白血病に対して腫瘍抑制的に働く事を難治性白血病マウスモデルを用い報告した(Leukemia, 29:576-85, 2015)。 平成27年度は、Notchシグナルの白血病抑制機構の破綻について、造血支持細胞のNotchシグナルの発現異常に焦点を絞り研究を行った。 Notchシグナルの重要なメディエーターである転写因子RBPJをノックアウトしたRBPJ欠損造血支持細胞と急性骨髄性白血病細胞を共培養すると、白血病細胞の増殖が促進することを確認した。 次にRBPJ欠損マウス(造血支持細胞でRBPJ欠損)もしくはRBPJ野生型マウスに白血病融合遺伝子を導入した造血細胞を移植すると、RBPJ欠損マウスが早期に死亡することを確認した。 現在は移植マウスの死因の詳細な解析と、Notchシグナルによる白血病抑制に重要な造血支持細胞の詳細な同定を行っている。 またヒト急性骨髄性白血病骨髄の造血支持細胞におけるNotchシグナルにつき解析準備中である。
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