研究課題
急性骨髄性白血病(AML)細胞では、白血病幹細胞と分化した細胞で栄養環境への依存度が異なることが知られている。これまでに、AML細胞で 分化誘導剤や 分化制御因子のshRNAといった、種々のAML 分化誘導系を用いて、AML細胞分化への効果を解析してきた。これまでに、分化誘導 に伴って発現変化する遺伝子として、アミノ酸や糖代謝といった代謝シグナル酵素や幹細胞維持や細胞分化に関わる遺伝子が変動することを見出してきた。本年度は、 白血病分化過程での代謝状態の変化を明らかにするために、AML由来細胞株(THP-1、HL60)を用いて、以下の解析を行った。細胞増殖能については、トリパンブルーによる細胞数の計数、または生細胞由来の内在性ATPによる発光量を測定して評価した。フローサイトメトリーを用いて、分化抗原(CD11b)マーカーの発現変化、 BrdUによる 細胞周期解析、Annexin V 染色によるアポトーシスの解析を行った。その結果、 分化誘導刺激24時間後に S期細胞の割合が一過的に亢進した。分化誘導刺激を72時間処理した細胞では、アポトーシスや分化抗原の発現誘導が惹起されることを明らかにした。さらに、長期的(30日間)に刺激した細胞で、 持続的な細胞増殖の抑制が観察された。また、 分化誘導刺激した細胞内での代謝経路について、培地中のグルコースと乳酸をHPLCで測定し、コントロール細胞と比較検討を行った。分化誘導刺激によって、グルコース消費、乳酸の産生が経時的に増加することを明らかにした。分化誘導刺激した細胞では、アミノ酸不含培地、グルコース不含培地下で通常培地と比較して有意な細胞増殖の抑制が見られた。これらの結果から、AML細胞分化の進行に伴って、栄養源への依存度が増大することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
初年度の目標であった研究を実施しており、おおむね計画通りに進展している。
本年度の研究で、白血病細胞分化過程での栄養シグナルの重要性が明らかとなった。 今後の研究では、代謝シグナルを介して、分化誘導に関与する標的遺伝子を特定する。標的遺伝子のshRNAや発現誘導し、その機能 を解析する。また、CRISPR/Cas9システムを用いたノックアウト細胞株を樹立し、化合物 による効果と比較検討を行う。栄養源代謝と白血病分化に関与する分子メカニズムの明らかにする 。
すべて 2015
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