研究課題
本研究では、 白血病幹細胞の未分化性維持に寄与する栄養シグナルと分化プログラムを結ぶ分子としてFOXOに着目し、白血病幹細胞維持メカニズムを明らかにすることを目的とした。前年度までに、AML由来細胞株(THP-1、HL60)を、FOXO阻害化合物を処理することにより、一過的なS期細胞の亢進、細胞分化およびアポトーシスが誘導されることを明らかにしてきた。また、分化誘導刺激した細胞内での代謝経路をHPLCで測定した結果、グルコース消費、乳酸の産生が経時的に増加することを明らかにした。今年度は、FOXO阻害化合物と解糖系やグルタミン代謝酵素阻害剤を共処理した細胞での細胞増殖抑制効果について検討した。その結果、FOXO阻害化合物と代謝酵素阻害剤の共処理した細胞では相乗的に増殖抑制することが明らかとなった。続いて、転写開始点を網羅的に抽出するCAGE(Cap Analysis Gene Expression)法を用いて、FOXO阻害によって変動する遺伝子を網羅的に探索した。転写因子結合モチーフ解析により、FOXO標的遺伝子の発現抑制が検出され、DNAマイクロアレイ解析を裏付ける結果となった。また、FOXO阻害によって、FOXO下流分子の発現が減少するのに対し、HIF1標的遺伝子の発現増加が見られた。HIF1は、FOXOと同様に解糖系に関与する遺伝子の発現を制御し、白血病幹細胞の栄養代謝シグナルを司る分子をして知られている。このことから、FOXOとHIF1が、栄養シグナルにより活性調節を受け、協調的に白血病細胞の生存調節に寄与していることが示唆された。FOXOおよびHIF1によって発現制御される直接標的分子に候補を絞り、shRNAによる機能抑制効果について、解析を進行させており、今後、白血病幹細胞の未分化性維持の鍵となる分子・シグナルの特定を目指している。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
The Journal of Biological Chemistry
巻: 291 ページ: 21496-21509
10.1074/jbc.M116.734756