研究課題/領域番号 |
15K19552
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小原 洋志 東京大学, 医科学研究所, 特任講師 (40528733)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 白血病 / がん抑制遺伝子 / がん遺伝子 / ヒトES細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、白血病幹細胞(Leukemia initiating cell: LIC)発生機序の解明にはがん遺伝子の発現量の理解が重要であると考え、ヒトを含む霊長類ES/iPS細胞より誘導した未分化造血細胞と遺伝子改変技術を組み合わせ、様々な発現量でがん遺伝子を未分化造血細胞へ発現誘導する。樹立した細胞を利用してがん遺伝子の発現量が未分化造血細胞の増殖能・自己複製能・細胞周期に与える影響を明らかにする。 当該年度にはまず、がん遺伝子発現ベクターとして、RAS変異型およびBCR-ABLをtet-onシステムを活用して発現制御するためのレンチウイルスベクターを構築した。また、陽性コントロールとして緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するベクターについても同様に構築した。続いて陽性コントロールベクターからレンチウイスを作成しヒトES細胞に導入したところ、得られた細胞は培地中のドキシサイクリン量に応答してGFPを発現することが確認された。一般にCMVプロモーター等をES細胞に導入した場合にサイレンシングが観察されることが知られているが、本ベクターではドキシサイクリン依存的にGFP発現を誘導可能であることが確認された。 さらに、代表的がん抑制遺伝子であるP53の第5エクソンを標的としてジンクフィンガーヌクレアーゼ法によりゲノム編集を行った。得られた遺伝子改変ES細胞のゲノムシークエンス解析を実施したところ、P53第5エクソンにフレームシフト変異が認められた。また、ウエスタンブロット解析により,遺伝子改変ES細胞においてP53タンパク質が検出されないことも確認した。続いて、遺伝子改変ES細胞がアポトーシス刺激に対して正常対照細胞と比較して低い応答性を占めすことも明らかとなった。以上より、前述の遺伝子改変細胞はP53を欠損していることが遺伝子、タンパク質、および機能の観点から確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書において当該年度中に実施する計画であった実験は主にプラスミドベクターの構築と得られた遺伝子改変細胞の品質評価に大別される。プラスミドベクターの構築については交付申請書に挙げたがん遺伝子のうち構築に成功したものから順次ヒトES細胞の遺伝子改変に用いており、遅延はない。遺伝子改変細胞の品質評価については交付申請書において予定していた遺伝子レベル、タンパク質レベルでの解析に加えて機能面での解析も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、前述した目的を達成するために、樹立したがん抑制遺伝子(p53)欠損ES細胞へ、同じく平成27年度に樹立したがん遺伝子発現ベクターを導入し、機能解析を行う。遺伝子導入およびtet-onシステムによるがん遺伝子発現誘導は、平成27年度にGFPを用いて行った品質評価実験の結果に基づいて行う。 前述の遺伝子改変ES細胞よりCD34陽性CD45陽性造血前駆細胞を分化誘導し、がん遺伝子の発現が細胞増殖に与える影響を評価するために増殖曲線を得る。さらに、がん遺伝子の発現が自己複製能に与える影響を検討するためにLTC-ICアッセイ、細胞周期に与える影響の解析のためにフローサイトメトリー解析を行う。前述の種々のがん遺伝子について同様のin vitro実験を行い、がん遺伝子発現の影響が顕著なものを選択して次の実験を行う。 上記のin vitro実験と同様に遺伝子改変ES細胞よりCD34陽性CD45陽性造血前駆細胞を免疫不全マウス(NOD/SCID/IL2rgKO:NSGマウス)へ移植し、がん遺伝子発現誘複製能も評価する。結果が良好であった場合には、6カ月以上の期間にわたり末梢血中の血液細胞の解析を続け、白血病発症の有無を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変細胞群より目的に合致したクローンを得るクローニングにおいて大規模な細胞培養を想定していたが、比較的短期間で遺伝子改変細胞のクローニングに成功したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は当該年度に得た遺伝子導入用ベクターと遺伝子改変細胞を組み合わせて得られたがん遺伝子発現・がん抑制遺伝子欠損細胞の機能解析を実施する予定で、その中には動物実験が含まれている。生じた次年度使用額を活用することで、結果のばらつきが予想されるマウスin vivoへのテスト細胞の移植実験を有効な規模で実施可能となると考えられる。
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