研究課題
骨髄増殖性腫瘍は、時に急性白血病へ転化し、その場合の予後は不良である。遺伝子変異の多段階蓄積により急性転化が生じると想定されるが、詳細な分子機構は未解明である。本研究では、慢性期に高頻度にみられるシグナル伝達異常であるJAK2 変異(JAK2V617F)、エピゲノム異常であるTET2欠損のマウスモデルに、転写因子RUNX1の機能異常を引き起こすCBFb-MYH11融合遺伝子を導入し、2 重~3 重変異のモデルを作成し、急性転化が生じるかを検討した。2 重~3 重変異モデルの作成に際しては、JAK2変異およびTET2欠損の遺伝子改変マウス同士の交配、骨髄細胞に対するレトロウイルスベクターを用いた融合遺伝子の導入、および骨髄移植などの実験手法を用いた。昨年度までに作成した「JAK2 変異+ 転写因子異常」、および「JAK2変異 + エピゲノム異常」による2 重変異モデルにおいては、12ヶ月の長期観察で急性転化は認められなかった。本年度は「エピゲノム異常+ 転写因子異常」による2 重変異モデル、および「JAK2変異 + エピゲノム異常 + 転写因子異常」による 3重変異モデルを作成し、解析を行った。骨髄細胞に対するレトロウイルスベクターを用いたCBFb-MYH11融合遺伝子の導入は約20%の効率で可能であり、遺伝子導入後の全骨髄細胞をレシピエントマウスに移植し、上記モデルマウスを作成した。作成したモデルマウスにおいて、現在までの約2ヶ月の観察期間内では急性転化は認められなかった。また本研究から派生して、シグナル伝達異常と慢性血小板増多を呈するCALR変異マウス、およびCALR変異とTET2欠損の2重変異マウスを作成し、急性転化の有無について検討を開始した。これらの作成済みのモデルにおいて急性転化が生じるかについては、引き続き観察が必要である。
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