研究実績の概要 |
平成28年度は、27年度から引き続き症例の登録とデータの収集を継続した。これまでに合計29例が登録された。 移植後1か月の早期のデータが固まった症例を解析し、評価したところ、移植前処置開始から移植後1ヶ月までの早期の総リンパ球数(TLC)の減少の程度を面積で評価したL-index30は、サイトメガロウイルスアンチゲネミア(CMV-AG)3個以上に増加した陽性群において、3個未満にとどまった陰性群と比較して、有意に高値を示し(中央値 20628 vs.17186, P=0.046)、われわれの既報(Kimura SI et al. Transpl Infect Dis 14:364-373, 2012)の再現性を証明する結果となった。さらに詳細に解析すると、特にday14、21、28のTLCがCMV-AG陽性化を予測する重要な因子であることが示唆された(Day14 TLC 8 vs. 151, P=0.023; Day21 TLC 72 vs. 318, P=0.072; Day28 TLC 255 vs. 444, P=0.096)。リンパ球サブセットごとの検証では、Day14、21、28のCD4陽性のTリンパ球、CD56陽性のNKリンパ球がCMV-AG陽性化と強い関連を認めた(CD4+細胞 Day14 4 vs. 102, P=0.021; Day21 30 vs. 154, P=0.044; 35 vs. 135, P=0.11; CD56+細胞 Day14 0.59 vs. 5.19, P= 0.068; Day21 7 vs. 49, P=0.18; CD28 45 vs. 125, P=0.046)。 今後は登録症例の追跡を継続し、リンパ球減少とCMV感染症との関連の他、移植片対宿主病(GVHD)や生存率に対する影響なども含めて検証を進めていく。
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