研究課題
CD25(interleukin-2 receptor,IL-2R)のB細胞性腫瘍における役割を解析過程で、可溶化したCD25(soulble IL-2R, sIl-2R)が細胞表面のCD25と同様に、腫瘍の悪性度を反映していることに見出した。B細胞性リンパ腫の一つである濾胞性リンパ腫において、治療前のCD25発現は予後不良因子となることを既に報告をしていたが、治療前の末梢血液中のsIL-2Rの方が無病生存率や全生存率を予測するのに優れていた。CD25発現とsIL-2R発現に相関関係はみられず、多変量解析でもsIL-2RはCD25発現とは独立した因子であった。濾胞性リンパ腫の進行が緩徐であるが、経過中より悪性度の高いびまん性大細胞型リンパ腫に形質転換し治療抵抗性となる。これを予測するバイオマーカーは未だ同定されていないが、治療前sIL-2Rは形質転換を予測するのに優れたマーカーになることを見い出した。2005年から2013年に急性骨髄性白血病と診断をされた症例のCD25の発現を後方視的に解析を行った。CD25は若年では独立した予後不良因子となることが報告されているが、高齢者においても予後不良因子になることを見出した。無イベント生存に関して、CD25は染色体異常や年齢などの他の予後不良因子とは独立した因子であった。再発時や他の血液疾患から発生した白血病では、CD25が高発現をしていたため、白血病クローンの進化に関わっている可能性が示唆された。
3: やや遅れている
CD25発現の腫瘍細胞への影響についての解析は、いくつかの細胞株のCD25発現を調べているがCD25高発現細胞株が入手できていない。また、腫瘍細胞への遺伝子導入によるCD25の発現については導入効率が充分ではなくCD25を恒常的に発現させるには至っていない。B細胞性リンパ腫に対する抗CD25抗体薬のin vitroでの効果では、CD25陽性細胞株が入手でき次第解析を開始する予定である。造血器腫瘍におけるCD25発現および臨床的意義の検討はCD25の可溶性分子である可溶性IL-2Rと濾胞性リンパ腫との関連を明らかにした。また、急性骨髄性白血病症例についてCD25発現の解析が終了し臨床情報との関連を解析した。
CD25高発現細胞株入手のため造血器腫瘍細胞株に加えて固形腫瘍細胞株も検索を行っていく予定である。また、腫瘍細胞へのCD25遺伝子導入の効率について検討が必要である。CD25高発現細胞株および遺伝子導入にてCD25発現させた腫瘍細胞株が入手でき次第、CD25 のリガンドであるIL-2 による影響や抗CD25 抗体薬のin vitro での効果について検討を予定している。骨髄異形成症候群から白血病への移行においてCD25発現が関与していることが示唆されたため、骨髄異形成症候群に加えて白血病への移行が報告されている骨髄増殖性腫瘍や抗癌剤治療歴のある症例についてCD25発現と白血病化の関連について調べていく。
細胞株を用いた実験の遅れによりそれに用いる予定であった試薬代や物品代の使用がなかった。
細胞株の購入、遺伝子導入に関する試薬の購入、臨床検体を用いた解析の抗体代の使用を予定している。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)
Leuk Res.
巻: 42 ページ: 82-87
10.1016/j.leukres.2015.12.013.
Leuk Lymphoma.
巻: 25 ページ: 1-7
Hematol Oncol.
巻: 7 ページ: 1
10.1002/hon.2277.