研究課題
T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)細胞株にレンチウイルスベクターを使用してSp1を強制発現させたところ、逆説的にSp1タンパク質の発現が低下した。この際、Sp1 mRNAの発現は低下しておらず、Sp1によって誘導されるマイクロRNAによる自己翻訳抑制の可能性が考えられた。そこでmicroRNAが介在している可能性を考え、microRNAアレイを用い、bortezomibによってT-ALL細胞で誘導されるmicroRNAをスクリーニングした。誘導されたmicroRNAの中から、miR-baseなどのデータベースを使用し、主にSp1を標的とするmicroRNAとしてhsa-miR-155を候補として抽出した。さらにリアルタイムPCRでT-ALL細胞における発現量とそのbortezomib投与による変化を調べたところ、bortezomib感受性が高いほどhsa-miR-155のbaselineの発現が高く、より誘導されやすいことが判明した。また、T-ALL細胞株であるJurkatにおいて、テトラサイクリン誘導発現系ベクターを使用し、ドキシサイクリン存在下にmiR-155を強発現させるシステムを構築した。このシステムを用いてhsa-miR-155を強制発現させると、mockベクターを強制発現させた細胞と比較し、顕著に細胞数が減少してしまう。このシステムを利用して、bortezomibを投与した際の細胞増殖・アポトーシス誘導を定量することを試みたが、hsa-miR-155を強制発現させただけでも細胞死が誘導されてしまうため、評価が困難であった。そこで、CRISPR-Cas9を使用して恒常的にhsa-miR-155の発現を低下させたT-ALL細胞株を樹立した。現在解析中である。
2: おおむね順調に進展している
テトラサイクリン発現誘導系を利用したhsa-miR-155を強発現させるシステムを構築したが、それではbortezomibの薬剤感受性等を評価する実験が行えなかった。そこで新たにCRISPR-Cas9を利用し、hsa-miR-155の発現を恒常的に低下させた細胞株を樹立した。現在その細胞株を用いて解析中である。
今後は今回樹立したCRISPR-Cas9によるhsa-miR-155ノックダウン細胞株を使用し、予定通り、bortezomibに対する薬剤感受性の変化、標的遺伝子の検索などを行っていく。
残額が少ないため、物品購入を控えたため。
T-ALL細胞株培養に用いる培地や血清など細胞培養関連試薬について約30万円程度を、制限酵素やPCR酵素など分子生物学関連試薬について約40万円程度、ウェスタンブロットやフローサイトメトリー解析に用いる抗体など免疫関連試薬について約40万円程度、マイクロアレイ用試薬に40万円程度と合計で150万円程度の予算を見込んでおり、平成28年度分の予算とともにすべて使用する計画である。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 備考 (2件)
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