T細胞性急性リンパ性白血病(T-cell acute lymphoblastic leukemia; T-ALL)は高悪性度の造血器悪性腫瘍で、未だ難治症例の予後は不良のため、分子病態に立脚した新たな治療戦略を開発する必要がある。これまでにT-ALL における最も重要な変異であるNotch1活性型変異をターゲットとした新規分子標的療法の開発を目的として研究を進め、プロテアソーム阻害剤を有力候補とする知見を得た。本課題においては、プロテアソーム阻害剤によるNotch1抑制のメカニズムの詳細を明らかにし、さらなる治療標的を同定することが目的である。とくにプロテアソーム阻害剤によってT-ALL細胞特異的に誘導されるmiR-155 の機能とシグナル伝達を解析し、バイオマーカーとしての臨床応用や新規治療戦略の開発へと展開することを目的に研究を進めた。 今回の研究でプロテアソーム阻害剤がSp1 依存性にNotch1 転写を抑制すると共に、p65・p105/p50 発現を低下させてNF-kB 活性を抑えることを見いだした。そのメカニズムとしてmicroRNA の関与を考え、T-ALL 細胞にbortezomib を作用させた際のmicroRNAの発現変化をアレイにてスクリーニングした。Bortezomib によって誘導されたmicroRNAの中から、Sp1やp65・p105/p50 を標的とするmicroRNA を選択した。さらにリアルタイムPCRでT-ALL 細胞における発現とbortezomib による変化を調べたところ、miR-155 の発現量とbortezomib 感受性が逆相関することが明らかになった。miR-155はT-ALLにおいてプロテアソーム阻害剤により誘導され、腫瘍抑制的に働いている可能性が高い。CRISPR/Cas9によるmicroRNAノックダウンのシステムを構築し、T-ALL細胞株にプロテアソーム阻害剤を作用させたときの感受性などを検証した。するとmiR-155をノックダウンさせた細胞株ではプロテアソーム阻害剤の感受性が低下した。そのメカニズムについて今後詳細に検証していく。
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