研究課題
骨髄増殖性腫瘍は、造血幹細胞の異常によって、骨髄系細胞のクローナルな増殖をおこす疾患であり、代表的な3疾患である真性赤血球増加症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症の患者の多くが、JAK2V617F変異を有することが分かっている。これまでにJAK2阻害薬の臨床応用が行われているが、野生型のJAK2も阻害するため副作用が多く、新たな治療戦略が求められている。これまでに、申請者はJAK2V617F特異的に活性化される転写因子の存在を明らかにしており、本研究ではJAK2V617F変異特異的な新規治療薬の開発を目的とした。平成27年度は、順天堂医院血液内科に通院中の患者の瀉血検体からJAK2V617F変異の定量を行なうとともに、CD34陽性細胞を抽出し収集し、in vitroでこの転写因子の役割の解析を行なった。得られた患者検体からRNAを抽出し、この転写因子の定量化の条件検討を行うとともに、コントロール検体の検討を行った。また、この転写因子を用いたレポーターアッセイ系を構築し、JAK2阻害薬を用いてその高い感受性を確認した。さらに、この転写因子の標的遺伝子を明らかにするために、JAK2V617Fを誘導する細胞株を新たにつくり、マイクロアレイ法によりAIM2、IL1B、CASP1などの遺伝子がJAK2V617Fにより誘導されることを示し、Experimental Hematology and Oncologyに報告した。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の目標は、JAK2V617F特異的な転写因子のin vivoおよびin vitroでの役割の解明であった。in vitroでの解析は現在も進行中であるが、平成28年度の目標であった分解阻害のメカニズムの解明を今年度行なうことができ、また新たにレポーターアッセイによる薬剤スクリーニングシステムの構築も行なうことができたため、おおむね順調に進展していると考える。
JAK2V617F特異的な転写因子の標的遺伝子を明らかにし、細胞の腫瘍化のメカニズムを明らかにしていく。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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