研究課題
多発性骨髄腫(Multiple myeloma、以下MM)は形質細胞性の難治性悪性腫瘍である。本研究では、MM細胞の増殖や悪性化の分子機構に関わる遺伝子の同定を目的として以下の実験を行った。①Interleukin-6(以下IL-6)はMM細胞の増殖と密接に関連している。IL-6とMM細胞の増殖に関わる分子機構を解明するために、レンチウイルスCRISPR-Cas9ライブラリーとIL-6依存性細胞株ANBL-6およびINA-6を用いたスクリーニング試験を行った。その結果、ANBL-6細胞からIL-6非依存性増殖クローンを樹立した。同様に、INA-6細胞からの細胞株樹立を試み、二つの細胞株に共通して破壊された遺伝子同定を目指している。②また、IL-6がMM細胞の遺伝子発現に与える影響を詳細に解明するために、Gene Ontology解析法、Gene set enrichment analysis(GSEA)解析法を利用したcDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、MM細胞に対するIL-6刺激は、増殖に関わる遺伝子群、プロテアソーム関連遺伝子群、スプライソソーム関連遺伝子群の遺伝子発現を有意に増加(濃縮)させていることが示された。本研究で発現増加遺伝子の1つとして検出されたPBZ binding kinase(PBK)は近年、複数の固形癌において発現レベルと予後不良の関連性が指摘されており、MMの病態との関連性が示唆された。そこで、研究代表者はCRISPR-Cas9システムを用いてPBK遺伝子破壊細胞株の樹立を試み、複数のMM細胞株においてKO細胞クローンを樹立させた。現在、細胞生物学的・分子生物学的手法によりKOクローンの性状解析を行っている。
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