研究課題
申請者は、細胞内の分子シャペロンタンパク質がHTLV-1感染細胞の癌化を誘導するゲノム異常を許容することで、腫瘍化への形質転換を助けていると仮説を立てた。分子シャペロンタンパク質の遺伝子発現制御は、転写因子Heat Shock Factor 1(HSF1)の活性に依存していることから、HSF1活性を人為的に調節して感染細胞に与える影響の検討を試みた。本研究では、細胞にストレスを与えずにHSF1活性を可逆的に制御できるプロテオチューナー法(膜透過性リガンドShield-1とヒトFKBP12タンパク質変異体[FKBP12mut]の機能的結合を応用したシステム)を用いた。ヒトHSF1は全長529アミノ酸(aa)からなり、185~203aa領域を内部欠損させることでドミナントアクティブ体として機能し、C末端379~529aa領域を欠損させることでドミナントネガティブ体として機能する。以上のようなHSF1変異体をFKBP12mutに融合し、動物細胞発現用のプラスミドを構築した。HTLV-1感染実験に用いるJurkat細胞にプラスミドを導入し、FKBPmut-HSF1融合タンパク質の発現を確認した。ウイルス感染の影響を検討するには、HSF1変異体を発現する細胞株を樹立するか、細胞への発現プラスミド導入効率がほぼ100%の条件下で実験を行う必要がある。Jurkat細胞を用いてFKBPmut-HSF1融合タンパク質を発現する細胞株の樹立を試みたが、細胞クローンを得ることができなかった。そのため、Neon Transfection Systemを用いてプラスミドの導入効率を検討した結果、細胞に90%程度の効率で遺伝子導入できる条件を見出した。現在は、HSF1の活性化状態および不活性化状態を維持した細胞にウイルスを感染させ、感染細胞の増殖に与える分子シャペロンの機能意義について検討している。
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