研究課題
H29年度は主に以下の2つの課題に取り組んだ。これらの研究成果は同種造血細胞移植後移植片対宿主病(GVHD)の病態解明とより優れたGVHDの新規治療標的の開発につながるものと考えられる。1. GVHDの新規バイオマーカーの確立:(1) 海外研究室と共同し慢性GVHDの発症を予測する蛋白としてCD163が有用であることを証明し、論文化した(Inamoto et al. BBMT 2017;23:1250-1256)。(2) 海外研究室と協力し、硬化型GVHDに関連する候補蛋白質を検証するコホートを抽出した。(3) 海外研究室と協力し、硬移植後閉塞性細気管支炎に関連する候補蛋白質を検証するコホートを抽出した。(4) 日本人GVHDコホートの検体収集を行った。2. 2014年NIH国際コンセンサスの有用性の検証:(1) 前向きに外来の同種移植後患者を評価し臨床データを収集した。(2) 2014年NIH基準を用いて単一施設の156症例を用いて後方視的にGVHDの再分類を行ったデータと海外の施設での約500例の症例のデータと比較した。(3) 慢性GVHDの重症度とQOLについての多施設研究を論文化した(Kurosawa et al. BBMT 2017;23:1749-1758)。(4)臨床試験におけるGVHD予防のエンドポイントについて日本血液学会総会シンポジウムにて招待講演を行った。(5)慢性GVHDの初回治療の臨床試験におけるエンドポイントに関し、海外研究室と共同し研究を進め論文化した(Martin et al. Blood 2017;130:360-367)。
2: おおむね順調に進展している
H29年度に予定していた研究内容の概ねを実施することが出来た。Tandem massspectrometryから得られた硬化型GVHDと閉塞性細気管支炎の候補蛋白を検証するコホートを、海外施設の研究者と共同して準備することが出来た。前向きに外来の同種移植後患者を評価し臨床データを収集した。研究成果の1つを学会シンポジウムにて招待講演として発表した。7つの論文(4つは国際共著論文)が科学雑誌に受理された。日本人の検体収集が予定よりも時間を要しているため、解析は来年度に予定した。
1. GVHDの新規バイオマーカーの確立:(2)(3)バイオマーカーを検証コホートで測定し、データ解析を行い、結果を論文化する。(4) 日本人検体での解析を行う。2. 2014年NIH国際コンセンサスの有用性の検証:(1) 収集したデータを用いた解析を行う。(2) 国際比較研究を論文化する。
日本人の検体収集が予定よりも時間を要しているため、予定していた蛋白測定を来年度に延期したため、次年度使用額が生じた。本研究では海外研究協力者との頻回なコンタクトは重要であり、情報収集も含めた年2回程度の国際学会や研究打ち合わせ会議の渡航費用を見込んでいたが、電話やWeb会議を効率的に利用することで経費を節約することが出来た。今年度は論文化を進めている研究に関し、英文校正費(外部に依頼するため謝金)、通信費、投稿・出版費といった費用が必要になる予定である。また、バイオマーカーの測定キットが必要であり、50検体程度の測定を予定している。通常1つのキットで1つの候補蛋白を40検体測定可能である。またキット価格は蛋白によって異なるが1キット15万円程度である。検査する候補蛋白は5つ以上となる可能性がある。また、今年度も情報収集を含めた国際学会や研究打ち合わせ会議の必要がある。以上の計画に次年度使用額を含めた研究予算を使用する予定である。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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