研究実績の概要 |
今年度は、初代培養のヒトB細胞に対するTGF-β3の作用機序について解明した結果を論文発表した(Tsuchida Y, et al. PLoS One. 2017;12(1):e0169646)。IL-21と可溶性CD40リガンド(sCD40L)刺激下において、TGF-β3は、ヒトB細胞のIgG、IgA、IgMの産生を抑制し、ヒトB細胞の細胞死を誘導し、CD38high形質芽細胞への分化および増殖を抑制していた。RNA-Sequencing(RNA-Seq)によるトランスクリプトーム解析では、TGF-β1、β3ともヒトB細胞に与える影響は類似していた。TGF-β3は、抗体産生細胞への分化に重要であるIRF4の発現を抑制し、Blimp-1、XBP1といった、抗体産生細胞への分化を担う遺伝子発現も抑制し、Sykのリン酸化を抑制していた。 また、今年度は、ヒト扁桃(Sumitomo S, et al. J Autoimmun. 2017;76:75-84)、ヒト末梢血(Nakachi S, st al. Arthritis Res Ther. 2017, in press)におけるLAG3陽性制御性T細胞(LAG3+Treg)の解析結果も論文発表した。ヒト扁桃のLAG3+Tregも、末梢血LAG3+TregもIL-10・IFN-γを高産生し、B細胞のアポトーシスを誘導し、抗体産生抑制能を有し、PD-L1もしくはFASが作用している可能性が示唆された。また、ヒト末梢血LAG3+Tregは、関節リウマチ患者で、健常人と比較して有意に減少しており、また、共分子阻害薬(CTLA4-Ig:Abatacept)投与によって、関節リウマチ患者のLAG3+Tregが増加していた。また、Abatacept投与によってLAG3+Treg様細胞が誘導されることが試験管内実験で明らかとなった。
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