研究課題/領域番号 |
15K19567
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原田 広顕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40579687)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アレルギー / 免疫寛容 |
研究実績の概要 |
OVAを飲用水に溶解して持続的に摂取させる方法で経口免疫寛容を確立するモデルを採用し、確かにその後のOVAの感作が成立しなくなることを確認した。一方で、感作したマウスに同様のOVAの摂取を行っても、OVA吸入によって誘発される気道炎症は改善しないことを確認した。 しかしながら、この方法でOVAを摂取して免疫寛容が誘導されたと考えられるマウスの脾細胞を他のマウスに移入した場合、移入を受けたマウスで免疫寛容は確認できなかった。脾細胞から樹状細胞を選択して移入する、脾細胞だけでなく腸間膜リンパ節、パイエル板、胸腺の細胞を移入するなど、条件をさまざまに変更して検証したが、レシピエントでの免疫寛容は確認されなかった。 予定していたプロトコールは、OVAに感作したマウスにおいて、OVAの経口投与が免疫寛容誘導できない理由を、処置を受けたマウスの細胞分画を別のマウスの移入することによって検証するものであったため、免疫寛容の移入が成立しない系では、プロトコールを変更する必要が生じた。 この系で免疫寛容の誘導にかかわる細胞を同定するため、樹状細胞とT細胞に注目し解析を行う方針とした。マウスにOVAを摂取させる前に、CFSEで標識したDO11.10マウスのT細胞を移入して、OVA経口投与後にOVA特異的T細胞の増殖がどの臓器で観察されるかを観察したところ、パイエル板および腸間膜リンパ節で移入細胞の有意な増殖が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一部想定していない結果が得られたために、プロトコールの変更に関して改めて検討を行う必要があったため
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験から、パイエル板および腸間膜リンパ節が、寛容を誘導する免疫応答の場となっている可能性が示唆された。 免疫寛容を誘導するメカニズムとして、制御性T細胞への分化が想定されるため、DO11.10マウスのnaiveT細胞を移入してOVAを経口投与する実験を行い、移入細胞で制御性分子(FoxP3など)の発現がみられないか確認する。 続いてあらかじめ感作されたマウスに対して、同様の実験を行い、制御性T細胞への分化がみられなくなるのかを確認する。事前の感作の有無によって制御性T細胞への分化に違いがみられるのであれば、naiveT細胞に対する抗原提示細胞の作用の仕方に違いが生じている可能性を考え、パイエル板や腸間膜リンパ節の樹状細胞を分離しT細胞に対する作用をin vitroで確認する。 感作を受けたマウスで寛容誘導がなされないが、これが抗原提示細胞の性質の変化か抗原特異的T細胞の存在によるかを検証するために、OVA特異的T細胞のみを移入することで成立する受動感作モデルを利用して、これにOVAを経口投与して寛容が誘導されうるのかをみる。受動感作モデルでも抗原提示細胞の性質に変化が生じる可能性は否定できないため、パイエル板や腸間膜リンパ節の樹状細胞を分離してin vitroの実験も行い確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の遂行に関連する支出の一部を他の財源からまかなったのと、プロトコールの変更に伴い当初予定されていた支出を下回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
先に記述した研究計画の遂行のための財源として使用する。
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