昨年度は、DO11.10マウス由来のnaiveCD4T細胞を野生型マウスに移入したのちOVA経口投与を行った場合、移入細胞のFoxP3発現の促進効果がみられないとの結果が得られていたが、マウスの数を調整して再検討したところ、腸間膜リンパ節においては、統計学的に有意差をもってOVA経口投与が移入細胞のFoxP3発現を促進させるとの結果が得られた。すなわち、抗原特異的T細胞の制御性T細胞への分化が、抗原の経口投与による寛容誘導に関与する可能性が示唆された。一方レシピエントの野生型マウスをあらかじめ水酸化アルミニウムゲル(alum)をアジュバントとしてOVAで感作させておくと、OVA経口投与は反対に移入細胞のFoxP3発現を抑制するとの結果が得られた。以上から、alumを用いた感作は、その後の腸間膜リンパ節における抗原特異的な免疫寛容機構を阻害する可能性が示された。 一方、同じアジュバントでDO11.10マウスにOVA感作を施し、このマウスからCD4T細胞を野生型マウスに移入してOVA経口投与を行った場合でも、移入細胞のFoxP3発現の促進は観察された。よって感作を受けたT細胞自体が免疫寛容に抵抗性となるわけではないと推測された。これは、Th2に分化させた細胞を移入して気道炎症を誘発する系で、OVA経口投与が気道炎症を抑制するという、昨年の結果と同じ方向性を示す結果と考えられた。 以上から、alumを用いた感作は、T細胞への直接作用以外の機序を介してOVA経口投与による免疫寛容機構に抵抗性を与えると考えられた。これがalumに特異的な事象であるのか、LPSを用いたOVAの経気道感作のモデルを用いて検証した。経気道感作したマウスはその後のOVA経口投与による寛容誘導に抵抗するとの結果が得られ、感作による経口免疫寛容への抵抗性はalumを用いた感作に特異的な事象ではないと考えられた。
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