研究課題/領域番号 |
15K19572
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
伊藤 清亮 金沢大学, 附属病院, 医員 (10467110)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 糖鎖 / IgG |
研究実績の概要 |
関節リウマチ(RA)患者血中IgGにおいては、結合しているN結合型糖鎖のガラクトース欠損が知られている(Nature. 1985 Aug 1-7;316(6027):452-7)。また炎症性関節炎において血清糖鎖の状態が、病勢マーカーとなる可能性や、病原性への関わっている可能性が示唆されている(Nat Rev Drug Discov. 2002 Jan;1(1):65-75)。これらの報告から、糖鎖異常はRAの病態に深く関わっていると考えられる。これらからRAにおける糖鎖の制御メカニズムが不明であり、病態の解明において解決が望まれている。RAの病態解明における糖鎖への注目は新たな視点であり、また新たな治療ターゲットとなる可能性がある。今回の目的は関節リウマチにおいて、TNFα、IL-6などのサイトカインに注目し糖鎖の制御メカニズムの解明を行うことである。
1)患者血清糖鎖の解析 IL-6阻害薬投与症例、TNF-α阻害薬投与症例、従来型の抗リウマチ薬投与症例において、治療前、治療後の血清を用いた。カラムを用いて、血清からIgGを精製した。MALDI-TOF MSを用いたGlycanMap Xpress(住友ベークライト社)により血清IgGの糖鎖解析を行った。その結果、治療法に関わらず、治療後にはガラクトースが増加しているプロファイルがみられた。 2)サイトカインの糖鎖合成酵素発現に与える影響 IgG産生ハイブリドーマ(34-3CIgG2a)を培養し、IL-6を加え、RNAを抽出し、糖鎖合成酵素の発現を解析した。ガラクトース転移酵素であるβ4GalT1の発現は、IL-6投与(1μg/ml)48時間後には増加していることが確認された。また、IL-6の他の濃度でも検討したが、100ng/ml、10ng/mlではβ4GalT1の発現は変化しなかった。β4GalT familyである、β4GalT2-6においても同様の検討を行ったが、サイトカインによって発現の変化はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GlycanMap Xpressを利用し、血清IgG糖鎖構造解析を予定どおり行った。また、in vitroの系を用いた糖鎖合成酵素発現について、サイトカイン濃度をふって解析を行った。またβ4GalT familyである、β4GalT2-6についても解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
1)炎症状態が糖鎖合成に与える影響:ハイブリドーマを用いた解析 TNF-α阻害薬治療により、関節リウマチにおける糖鎖異常が正常パターンに戻ることが報告されたが、炎症そのものが糖鎖に影響している可能性がある。前述のハイブリドーマを培養し、リポポリサッカライド(LPS)にて刺激し炎症状態にすることが、糖鎖にどのような影響を与えるか解析する。具体的には定量的PCRにて糖鎖合成酵素発現にどのような影響を与えるか解析する。 2)レクチンELISAを用いた簡便なスクリーニング糖鎖解析方法の開発 レクチンは糖鎖と結合する蛋白質である。IgA腎症では、IgAのO結合型糖鎖の構造を認識するレクチンであるHAA、Jacalinを用いたELISA、ウェスタンブロットにてガラクトース欠損IgAを特異的に見出す方法が報告されている(Kidney Int. 2007 Jun;71(11):1148-54.)。この手法を応用し、関節リウマチにおける糖鎖異常を特定するためのレクチンELISAを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にELISA系を樹立するために、費用を若干残した。
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次年度使用額の使用計画 |
ELISAプレート、ELISAコーティングバッファーなどに使用する。
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