研究課題/領域番号 |
15K19572
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
伊藤 清亮 金沢大学, 大学病院, その他 (10467110)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / IgG / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
【概要】関節リウマチ(RA)は、多発関節炎を主徴とする原因不明の炎症性疾患である。血清学的には約7割の患者にリウマトイド因子陽性を認め、他に抗CCP抗体も特異度が高い。RA患者血中IgGにおいては、結合しているN結合型糖鎖のガラクトース欠損が知られている。最近TNFα阻害薬治療により、この糖鎖異常が正常パターンに戻ることが報告された。しかしながらそのメカニズムは不明である。RAにおける糖鎖の病態およびその制御機構を明らかにすることが、RAの病態をより明らかにし、新たな治療ターゲットとなる可能性がある。そこで本研究の目的は、TNFα、IL-6などのサイトカインに注目し糖鎖の制御メカニズムの解明を行い、その臨床応用の基礎を得ることとする。 【結果】これまでに、サイトカインの糖鎖合成酵素発現に与える影響としてIgG産生ハイブリドーマ(34-3CIgG2a)を培養し、IL-6、TNFαのサイトカインを加え、RNAを抽出し、糖鎖合成酵素の発現を解析した。ガラクトース転移酵素であるβ4GalT1の発現は、IL-6投与(1μg/ml)48時間後には増加していることが確認された。また、IL-6の他の濃度でも検討したが、100ng/ml、10ng/mlではβ4GalT1の発現は変化しなかった。β4GalT familyである、β4GalT2-6においても同様の検討を行ったが、サイトカインによって発現の変化はみられなかった。 臨床面では、IL-6阻害薬投与症例および従来型の抗リウマチ薬投与症例において、治療前、治療後の血清を用い、カラムにて血清からIgGを精製した。そして、MALDI-TOF MSを用いたGlycanMap Xpress(住友ベークライト社)により血清IgGの糖鎖解析を行った。その結果、治療法に関わらず、治療後にはガラクトースが増加しているプロファイルがみられた。以上よりIgG糖鎖異常は、関節リウマチの病勢改善と相関している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レクチンELISAを用いた簡便な糖鎖スクリーニング方法樹立にあたり、コントロールの設定などで時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
レクチンELISAを用いた簡便なスクリーニング糖鎖解析方法の開発 レクチンは糖鎖と結合する蛋白質である。IgA腎症では、IgAのO結合型糖鎖の構造を認識するレクチンであるHAA、Jacalinを用いたELISA、ウェスタンブロットにてガラクトース欠損IgAを特異的に見出す方法が報告されている(Kidney Int. 2007 Jun;71(11):1148-54.)。この手法を応用し、関節リウマチにおける糖鎖異常を特定するためのレクチンELISAを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
レクチンELISA系樹立に向けた、プレートやELISAの物品購入にあてる。
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