研究課題/領域番号 |
15K19573
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
石丸 かよ子 山梨大学, 総合研究部, 助教 (10710353)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 概日時計 / マスト細胞 / アナフィラキシーショック |
研究実績の概要 |
アナフィラキシーショックはアレルギー性疾患における最重症の病態の1つであるにもかかわらずその制御機構についての理解はこの数十年間ほとんど進歩していない。研究代表者らは、生物の約24時間周期性(概日性)の生理活動リズム(睡眠・覚醒、ホルモン分泌等)を司る「概日時計」がアナフィラキシーショックの強さを時間依存的に調節していることを見出しアナフィラキシーショックの新しい制御のしくみを提唱した(JACI 2011, JIR 2014)。しかしながら概日時計がアナフィラキシーショックを制御するメカニズムは未だ不明である。そこで本研究では概日時計によるアナフィラキシーショックの時間依存的な制御メカニズムの詳細を解明し、得られた新知見をアナフィラキシーショックの新たな予防/治療に応用することを目指す。 平成27年度は以下の検討を行った。まず野生型マウスまたは時計遺伝子Clock変異マウスの骨髄細胞をin vitroで分化させ骨髄由来培養マスト細胞(BMMCs)を調整した。このBMMCsをそれぞれマスト細胞欠損マウス(W/Wvマウス)に静脈内注射し、全身的なマスト細胞の再構築を行った。 それらのマスト細胞選択的にClock遺伝子が変異したマウス及びコントロールマウスにアナフィラキシーショックモデルであるPSA(passive systemic anaphylactic)反応を経時的に誘導し、体温低下、血圧低下、血中ヒスタミン濃度、血中CCL2(MCP-1)濃度について比較検討した。 その結果マスト細胞選択的にClock遺伝子が変異したマウスではコントロールマウスで見られるアナフィラキシーショッック反応の日内変動が消失していた。この結果は、マスト細胞の概日時計がアナフィラキシーショッック反応の強さを時間依存的にコントロールしていることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおりの実験結果が得られているため。 今後は研究代表者が所属する研究室の中尾篤人教授、中村勇規講師により指導・協力関係をさらに密にして計画を進める予定。
|
今後の研究の推進方策 |
マスト細胞の概日時計がアナフィラキシーショックを時間依存性に調節するメカニズムを解明するために、マスト細胞選択的Clock変異マウスおよびコントロールマウスから経時的に腹腔マスト細胞を単離しマイクロアレイ法を用いて網羅的に遺伝子発現を比較検討する。本実験によって概日時計による時間依存的なアナフィラキシーショックの制御に関与する遺伝子群(候補)が明らかになる。 特にIgE受容体シグナルを調節する遺伝子群について着目しこの候補遺伝子群についてreal-time PCR法、及びウエスタンブロット法を用いて発現レベルの時間的変動についてmRNA, タンパク質レベルで明らかにする。さらにsiRNAを用いた検討によってこの候補遺伝子群のIgE受容体シグナル応答への影響について解析する。またプロモーターレベルでの解析もCHIPアッセイなどを用いて検討する。これらの検討によってマスト細胞の概日時計によるアナフィラキシーショックの時間依存的な制御において重要な遺伝子(タンパク質)群を明らかにする予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験が順調に進み、購入を予定していたマウスや試薬の数や個数が減らせたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
繰り越し費は予め計上していた1,500,000円とあわせて平成28年度にマウス、細胞培養試薬等の物品費として使用する予定である。
|