研究実績の概要 |
アナフィラキシーショックはアレルギー性疾患における最重症の病態の1つであるにもかかわらずその制御機構についての理解はこの数十年間ほとんど進歩していない。研究代表者らは、生物の約24時間周期性(概日性)の生理活動リズム(睡眠・覚醒、ホルモン分泌等)を司る「概日時計」がアナフィラキシーショックの強さを時間依存的に調節していることを見出しアナフィラキシーショックの新しい制御機構を提唱した(JACI 2011, 2014, 2016, JIR 2014, Allergy 2016)。本研究では概日時計がアナフィラキシーショックを調節するメカニズムの解明を目指した。 平成27年度はマスト細胞選択的にClock遺伝子が変異したマウスではコントロールマウスで見られるアナフィラキシーショック反応の日内変動が消失することを見出し、マスト細胞の概日時計がアナフィラキシーショックの時間依存的調節に中心的役割を果たしていることがわかった。平成28年度は腹腔内マスト細胞を経時的にマウスから単離しその高親和性IgE受容体(FcεRI)の発現を検討した。その結果FcεRIがマウス休息期に高く活動期に低い発現変動を示すこと、さらにFcεRI発現を調節する転写因子群の発現も時間依存性を示すことが明らかになった。これらの結果から、マスト細胞の概日時計が転写因子レベルでマスト細胞のFcεRI発現調節を時間依存的にコントロールすることによってアナフィラキシーショックを休息期に活動期より重症化させることが明らかになった。 本知見はアナフィラキシーショックの病態生理についてこれまでにない視点を提供し「時間」を考慮する新たな予防・治療戦略を提唱する。
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