研究課題
本研究は九州地区多施設共同超音波前向きコホート研究データを基礎研究に連動させ、関節リウマチ(RA)の分子標的治療薬に対するトランスレーショナル研究である。アウトカムであるX 線関節破壊進展ゼロの達成に向けての TNF 阻害薬、IL-6 阻害薬、T 細胞選択的共刺激調整薬、JAK 阻害薬に共通及び特有の有効性発現機序を解明し、RA における分子標的治療薬の適性使用の理論的根拠の確立を目指す。現在まで本研究に276症例がエントリーされた。昨年度に引き続き解析症例数を増やし、1.分子標的治療薬の有効性発現の経過の超音波による評価、2.血液バイオマーカー変動の評価、3.超音波指標とバイオマーカーの関連解析による分子標的治療薬の有効性を反映する Key molecules の抽出を行なった。治療1年間の臨床・超音波評価と自己抗体との関連を解析した。超音波指標の改善には生物学的製剤治療の既往が関連し、自己抗体高力価は超音波指標の早期反応性不良と関連していた。さらに、マルチサスペンションアレイを用いたバイオマーカーの測定を行った。TNF 阻害薬、IL-6 阻害薬、T 細胞選択的共刺激調整薬では、一部のバイオマーカーでは治療による異なる変動を示した。さらに、超音波指標の改善に関連する共通するKey moleculesとしてIL-6などが抽出され、薬剤別での解析では異なるKey moleculesが抽出された。今後、最終アウトカムである関節破壊進展ゼロに関連するKey moleculesを抽出し、4.In vitro のシグナル伝達解析による臨床サンプルから抽出された Key molecules の意義の実証、5.エビデンスに基づく分子標的治療薬選択アルゴリズムの確立を目指す。
2: おおむね順調に進展している
予定していた症例数のエントリーと解析が順調に進んでいる。分子標的治療薬の有効性の超音波指標および血液バイオマーカーでの評価および解析は完了し、超音波指標を用いた有効性におけるKey molecules が抽出された。最終アウトカムである関節破壊進展ゼロの評価のため、X線データ集積がほぼ完了し、今後解析を行う。その結果をもとに関節破壊進展ゼロにおけるKey molecules を抽出し、In vitro シグナル伝達解析につなげる。
集積したX線データによる関節破壊進行の評価を行い、最終アウトカムである関節破壊進展ゼロに関連するKey moleculesの抽出を行う。上記結果をもとに以下の検討を行う。1.In vitroシグナル伝達解析を用いた Key molecules の意義の評価;超音波指標と血液バイオマーカーで推察された有効性発現機序の裏付けを In vitroシグナル伝達解析で実証する。2.超音波・バイオマーカー・シグナル伝達解析から分子標的治療薬の適応アルゴリズムの構築;目標達成に向けた治療のため、ベースラインと導入早期(3ヶ月後) の超音波と血液バイオマーカーの結果を用いた多角的な解析から、1 年後の関節破壊進展ゼロを目標とした、分子標的治療薬選択のアルゴリズムを構築する。
現在測定したバイオマーカー以外のマルチサスペンションアレイを追加で行う必要がある。また、In vitroでのシグナル伝達解析は未施行である。
数種類のバイオマーカーを測定するマルチサスペンションアレイを追加で行う。In vitroでのシグナル伝達解析への進展させるため、細胞刺激用のサイトカインなどの試薬や細胞あるいは細胞培養液におけるバイオマーカー測定試薬を使用する予定である。
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Modern Rheumatology
巻: 27 ページ: 252-256
10.1080/14397595.2016.1221874.