研究課題
関節リウマチ(RA)の予後は生物学的製剤の登場により改善し、臨床的寛解に至る例が増えている。しかし、現行治療では一旦骨破壊が進行すると関節の機能的改善は困難であり、早期の積極的で強力な治療が必要とされる。一部の症例では治療により骨修復を認めるが、その機序は不明である。われわれはPET、MRIや関節超音波など用いてRAの画像的な病態解明を目指しており、中でも骨修復を反映するNaF-PETに注目している。まずは、実際に骨修復を認めたRA患者におけるFDG-PETおよびNaF-PET等画像所見に関する検討を行った。この検討では、対象は生物学的製剤を新規導入したRA患者12例とし、開始時の手のFDG-PETおよびNaF-PET所見と臨床像との関連を解析し、さらに、の後6ヶ月間のX線所見の変化との関連を関節単位で解析した。その結果、個々の関節におけるFDGおよびNaFの集積度は相関するが、集積パターンから、FDGは主に滑膜炎を、NaFは骨破壊・修復を反映し、炎症と骨変化が一連の病理変化である可能性が示された。さらに、生物学的製剤で治療しているRA患者67例の、骨びらんの修復の頻度と、修復を認める患者に関する検討を追加した。その結果、早期RA患者で、生物学的製剤の治療反応性が優れている場合に骨びらんの修復が見られていた。これらの知見を基に、現在はマウス関節炎モデルのNaF-PET所見・組織学的所見を詳細に比較することで、骨修復のメカニズムを解明し、RAの最適な治療法開発を目指すことを目指している。
3: やや遅れている
平成27年度の研究実施計画としては、RA患者におけるFDG-PETおよびNaF-PET所見と、臨床像や骨破壊・骨修復に関する解析を実施し、学会および論文での発表を行うことができた。しかしながら、平成28年度は、生物学的製剤治療中にしばしば観察される「びらんの修復」機転についての解析を加え、その特徴を明らかにすることができたが、マウスの関節炎モデルでの検討は現在も実施中である。
RA患者のデータだけでなく、マウスモデルを用いて、関節炎を誘導し、その後関節炎が軽快していく過程の中で、骨の破壊と修復が見られることを観察し、炎症性サイトカインや骨代謝マーカーの測定、病理像の検討などを行うことで、RAにおける炎症と骨代謝における骨破壊や修復の予測因子としての画像評価の役割を解明し、画像的「寛解」を目指した治療の可能性を追求していく予定である。
平成28年度は、関節炎惹起用抗コラーゲンII型モノクロナール抗体カクテルにより関節炎マウスを誘導し、その病変をmicro-CT、FDGおよびNaF-PETで画像的に評価し、局所における炎症性サイトカインの産生、破骨細胞の局在など、病態・病理との関連を明らかにすることを目標としていたが、RA患者における骨びらんの修復における臨床的特徴に関する検討を追加して実施しており、マウスモデルの実験が遅延したことにより、基礎実験に使用予定だった費用の繰り越しが生じている。
マウスモデルの関節炎の誘導方法は確立しており、平成29年度に当初予定していた追加実験を行い、RAにおける炎症、骨代謝の変化、骨破壊・修復のプロセスを詳細に解析することを計画している。そして、本研究の目的である、骨修復が検出される症例と、そうでない症例の病態を比較し、今後の最適なRA治療法の開発を目指した研究を推進していく予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Mod Rheumatol.
巻: 26 ページ: 180-7.
10.3109/14397595.2015.1069458.