研究課題/領域番号 |
15K19580
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
折原 芳波 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (60450623)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 消化管アレルギー / サイトカイン / 細胞増殖 / 血便 |
研究実績の概要 |
好酸球性消化管疾患の中でも、新生児~乳児が対象となる食物タンパク質誘発性胃腸炎を対象疾患として取り組んだ。 昨年度に引き続き、特に患者数の多い牛乳を原因食物とする患者群の抗原特異的細胞増殖試験の基準作成に取り組みはじめた。嘔吐、血便の有無によって4つの病型に分けられる本疾患について、血便の有無を中心に牛乳抗原に対するそれぞれの細胞増殖指標のうち、最も高い反応性を示した指標を各ドナーから抽出し、比較検討を行った。 リンパ球の増殖具合やin vitroで産生されるサイトカイン量について検討を行った。その結果、細胞増殖や細胞増殖に ついては血便観察群と非血便観察群において有意差が検出できるものの、必須のIL-2の産生量に有意差は観察できなかった。また、抗炎症性サイトカイン(TNF、IL-1β、IL-6)およびIFN-γ、IL-17Aについては牛乳抗原刺激により各産生量は有意に上昇するものの、両群間での差は認められなかった。一方、2型サイトカインであるIL-4、IL-5、IL-13については両群間で有意な差を認め、特にIL-5にいたっては中央値にして10倍以上の上昇を観察した。制御性サイトカインの一つとして考えられるIL-10は2型サイトカインと同様、両群間で有意な差を認めた。このIL-10が、2型サイトカインが顕著に上昇した結果、in vitro内での制御の目的で産生されたものか否かは、細胞内染色あるいうはELISpotを用いた実験を今後行うことで明らかになってくると思われる。 これらの結果より、消化管アレルギーの亜型である血便の有無は両群ともに抗原特異的免疫応答においていくつかの特性を共有するが、明確に異なる抗原特異的細胞増殖やサイトカイン産生など、重要な 特徴を有しており、この両群が独立した2つの病型であり、血便を呈する群が血便を呈さない群の重篤な形態ではないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、上記結果はJACI-D-17-00170としてJournal of Allergy and Clinical Immunology(Impact Factor 12.485)に投稿、マイナー校正中である。 また、名誉ある学会にて発表させていただく機会を頂戴し(著者クローズド、要旨内容のみの査読にて選定)自身の研究を国際的に有名な先生方に印象づけることができた。 ただ、フローサイトメトリーのほうについては、使用していた複数の抗体がリコール対象となってしまったり、以前使用していた機器が故障(修理不可)してしまったために抗体セットを組み直したりというトラブルもあったが、それらの点を踏まえ、今後、解析を続けていきたいと思っている。
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今後の研究の推進方策 |
トラブルが続いてしまっているフローサイトメトリーでの解析を中心に進めていく予定である。少なくとも、どの細胞群が抗原特異的反応によって増殖しているのかを推測していけるよう、拍車をかけていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
機器トラブル等によりpendingなってしまった実験もあったが、ほかのプロジェクトの進行が順調であったため、総計としてはほぼ予定通りの支出金額に収めることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
所属の異動がありはするものの、今後は、このプロジェクトのゴールを目指して着実に進めていく予定である。
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