本研究は、microRNA (miRNA) の観点から、関節リウマチ (RA:Rheumatoid arthritis) の分子病理を解明することを目的としている。本研究を遂行する上で、まずmiRNA標的遺伝子の効率的なデータマイニング法の開発を行った。つまり、様々なアルゴリズムに基づいてmiRNA標的遺伝子を予測するソフトは既にweb上に多数存在するが、これらの予測から得られるデータは膨大であり、病態と密に関連するmiRNAを抽出するのはしばしば困難が伴うからである。そこで、文献からRA患者由来滑膜組織、滑膜線維芽細胞、末梢血単核球で変動を示した miRNAを選別し、複数のmiRNA標的遺伝子予測ソフト(TargetScanなど)により、標的遺伝子を検索した。次に、得られた標的遺伝子を元に、パスウェイ解析を実施し、さらに、個々のmiRNAの“増加”“減少”を考慮することで、RAの病態に強く関与すると考えられる標的遺伝子の絞り込みを行った。一連の解析の結果から、RA患者由来組織で変動を示した数種類のmiRNAが、mTORシグナル伝達経路に強く関与することが示唆された。本法により、miRNA標的遺伝子予測やPathway解析にかかる作業の自動化が可能となり、研究推進の大きなアドバンテージになると考えている。
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