研究課題/領域番号 |
15K19583
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長岡 健太郎 北海道大学, 大学病院, 医員 (20750962)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / 肺炎 / ニューモリシン / 嫌気性菌 |
研究実績の概要 |
・肺炎球菌の嫌気的環境下での病原性について、これまで明らかにした研究はない。 ・今回肺炎球菌を嫌気培養/好気培養し病原性の検証をVitro/Vivoにおいて行った。 ・In vitroでは、嫌気培養した肺炎球菌では好気培養時と比較して、より高い菌量までの増殖が確認された。また、菌の増殖後により長時間、生菌数が保たれることが確認されたた(好気培養下では一定時間後、オートリシン産生によると考えられる生菌数減少が起認められた)。さらに、肺炎球菌の主要な病原因子であるニューモリシン(PLY)の発現量をウエスタンブロット法にて検出したところ、嫌気培養した肺炎球菌では好気培養時と比較してより高いPLYの発現が認められた。 ・In vivoでは、嫌気培養/好気培養した肺炎球菌をBALB/cマウスに経気管感染し、生存率、臓器内生菌数、肺胞洗浄液中の細胞分画、サイトカインを検証した。結果としては、嫌気培養した肺炎球菌を感染させた群で、好気培養した肺炎球菌を感染させた群と比較して有意な生存率の減少、臓器内生菌数の増加、サイトカイン上昇が確認された。感染後からの継時的な変化を確認したところ、嫌気培養した肺炎球菌の感染では、より早期に菌血症を発症していたが確認され、In vitroでのPLY発現亢進を反映した結果と考えられた。
・肺炎球菌は嫌気培養することにより、好気培養した際と比較し、PLYの発現が亢進するphaseを呈することが明らかになった。また、その際に下気道感染を起こした場合、肺炎球菌の従来の培養方法である好気培養と比較して、著しい病原性の増強を呈することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
肺炎球菌を嫌気培養/好気培養し病原性を比較検討することは予定通り進めることができた。肺炎球菌を嫌気培養した際にニューモリシンの産生が亢進する現象は想定外であり、本研究のインパクトがより強い成果となるものであった。今後は新たに判明した点について研究追加が必要でもある。
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今後の研究の推進方策 |
嫌気培養下でのニューモリシン(PLY)発現亢進を、ウェスタンブロットのほか、mRNA測定で確認したい。さらにPLYの細胞内局在(細胞壁~細胞質内?)を蛋白抽出法を分けて確認したい。また、In vivoでのニューモリシンの発現、継時的変化の検証も行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに判明したニューモリシン発現亢進についての検証、当初から予定していたIn vivoでのニューモリシン産生のデータ取得のため。1年目で予定していたデータ取得、成果が得られ、学術的発表のためのデータ確認、追加検証のために次年度使用額を予定した。
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次年度使用額の使用計画 |
肺炎球菌におけるニューモリシン局在を検証するため、各種蛋白抽出酵素、In vivoでのニューモリシン変動の検証について、マウス100匹程度を購入予定である。
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