肺炎球菌の嫌気的環境下での病原性について、これまで検証した研究はない。今回肺炎球菌を嫌気培養/好気培養し病原性の変化について検証を行った。 In vitroの研究として、肺炎球菌の増殖曲線、肺炎球菌の主要な毒素であるニューモリシンの蛋白発現量(Western Blot(WB)法にて検証)、およびニューモリシン、自己融解酵素(オートリシン)発現に関連するmRNA発現量の経時的変化を比較検討した。In vivoの研究として、嫌気/好気培養した肺炎球菌をマウスに経気管投与し、肺炎モデルを作成し、病原性の相違について検証した。 In vitroの結果として、肺炎球菌は好気培養後、15時間で生菌数が減少し、21時間後には培養液中の生菌が消失するのに対し、嫌気培養では菌の増殖24時間後にも生菌が残存することが判明した。好気/嫌気培養において、WBでは菌液中のニューモリシンの発現は相違なかったことに対し、mRNAの検証において21時間後に好気培養でオートリシンに関連するmRNAの発現が亢進がみられ、嫌気培養では亢進がみられない結果となった。 In vivoの結果として、late log phaseで作成した菌液では、好気培養に比較して嫌気培養した肺炎球菌で有意な病原性の亢進がみられた。さらに検証したところ、本実験で用いた肺炎球菌の好気培養ではearly log phaseで病原性が亢進することが判明した。最後に嫌気(late log)/好気培養(early log)した肺炎球菌のマウス肺炎感染後のmRNAを検証したところ、嫌気群で感染48時間後にニューモリシンのmRNAが有意に亢進することが判明した。 これらの結果より、肺炎球菌は嫌気的環境下では好気環境と異なる病原性をもつことが示された。肺炎球菌の臨床を考える上で有用な知見と考えられた。
|