本研究では、耐性菌時代における既存抗菌薬のリバイバル使用の検討と題して、 既存抗菌薬併用による薬剤耐性菌治療の開発を目的とした。施設異動のため実際の研究内容に若干の変更があった。 まず様々な薬剤耐性菌の中で、対象菌としてカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae)を選択した。その理由は、本耐性菌がこの10年間で世界中に急速なスピードで拡散する新興感染症であり、早急な対策が必要とされているためである。併用療法の検討を行うためには臨床株が必要であり、そのために我々の施設で実施している国内サーベイランスや、日本とは異なる遺伝子型によるCREが海外では流行していることからミャンマーで推進しているCREサーベイランスに研究費の一部を充てた。これらサーベイランスの結果、IMP型CRE、NDM型CREの臨床株を多数収集した。 次に、併用療法の有効性をin vitro実験系にて評価するために、チェッカーボード法および殺菌曲線実験系を組み立てた。CRE治療として確立しつつあるダブルカルバペネム療法を参考に、新たな囮薬剤としてセファマイシン系であるセフメタゾール(CMZ)に着目した。NDM型、KPC型、IMP型CREに対してチェッカーボード法を用いると、CMZを併用することでメロペネム(MEPM)のMICが4-8倍程度低下し、多くの臨床株で併用効果が見られることを確認した。さらに殺菌曲線での検討も行い、MEPM/CMZの併用投与は単独投与に比べ有意にCREの増殖を抑制することも判明し、臨床治療への応用の可能性を見出した。
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