本研究の目的は、インフルエンザウイルスに肺炎球菌が重複感染した重症肺炎で見られる過剰な炎症が生じるメカニズムを、宿主細胞のオートファジーに着目して解明することである。前年度までの検討において、in vitro重複感染モデルにオートファジー阻害薬を作用させた結果、肺炎球菌の接着・侵入の抑制、およびInterleukin(IL)-6の産生低下を認めた。また、マイクロアレイによる遺伝子レベルにおける検討でも同様に、IL-6 mRNAの発現低下を認めた。一方、オートファジー阻害薬を作用させることにより、遺伝子レベルで発現が増加したものの一つにMatrix metalloproteinase(MMP)-10があり、蛋白レベルにおいても増加が認められた。 本年度は、このin vitroモデルにおいて、オートファジーの過程で生成される小胞の発現について経時的な解析を行った。重複感染2時間後には少数の細胞において、また、6時間後には多くの細胞において小胞の発現が確認された。16時間後には発現している細胞は減少した。この結果より小胞の発現に経時的なピークがあることが示唆された。更に重複感染させたマウスの肺におけるLC3Bの発現を免疫染色によって検討したところ、非感染マウスと比較して、炎症細胞におけるLC3Bの発現が増加していた。 これまでの検討によりインフルエンザウイルスと肺炎球菌が重複感染した重症肺炎の病態・免疫応答にオートファジーが関連していることが示唆された。上記のうち再現性の確認が十分でないものについてはその確認を、また、オートファジーに関連したその他のマーカーや細胞死関連因子との比較などを含めて研究を継続する予定である。
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