研究実績の概要 |
(1)hCD46遺伝子組換えマウスを用いた感染実験による病態の比較 ; 本研究ではレンサ球菌の表面に発現するMタンパク質の受容体の一つであるヒトCD46分子を全身の細胞に持つ遺伝子組換えマウスを宿主として用いた。後ろ足に10の7乗個のGASを皮下注射した場合、MTB313では脚部の壊死が起こり二週間以内にほぼすべての個体が死亡するが、MTB314では脚の腫れにとどまり、回復することを以前に示した。本年度は菌の挙動及び病態の進行をさらに解析するため、同様の感染方法を行い、五日後に各臓器に生きたGASがどの程度存在しているかを調べた。結果、血中、膝下リンパ節、脾臓、肝臓において、生菌数はMTB313の方がMTB314に比して有意に高いことが示された。 2)ヒト培養細胞を用いたMTB313, MTB314, MAT100,MAT101の細胞内侵入性の比較 ; ヒト由来腸管上皮様細胞Caco-2と、ヒト表皮角化細胞株HaCaTを用いGASの細胞内侵入性を比較した。その結果、いずれの細胞を用いた場合においてもMTB313に比してMTB314は細胞内に取り込まれる割合が高かった。また、完全長rocAを導入したMAT101とそのコントロールMAT100でも同様の実験を行ったところ、MAT100に比してMAT101の方が細胞内侵入性が有意に高かった。 3)バイオフィルム形成能力の比較 ; 細菌の形成するバイオフィルムは、体内では人工的に挿入された医療用異物等に形成されることが多いが、通常の組織に形成され病原性を発揮する例も報告されている。そこで、本研究で分離・作成した菌株群のバイオフィルム形成能力を評価した。基準株としてATCC12344を用い比較したところ、MTB313に比してMTB314の方が細胞外構成物を多く作ることが示された。ATCC12344はバイオフィルムをほとんど作らなかった。
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