研究実績の概要 |
肺炎は世界では死因4位であり、その中でも肺炎球菌は肺炎の原因として主要な起炎菌である。間葉系幹細胞(MSCs)は敗血症などの自然免疫において抗炎症採用が報告されているが、肺炎球菌肺炎に対する作用はほとんど報告されていない。 本研究では肺炎球菌肺炎におけるMSCsの抗炎症作用としての役割について検討した。MSC培養上清を添加した骨髄由来マクロファージ(BMDMs)をToll様受容体(Toll-like receptor ;TLR)2,TLR9,あるいは4リガンドで刺激後、TNF-α、IL-6は有意に減少し、一方IL-10は有意に上昇した。さらに上記のBMDMsをTLR2,TLR9リガンド、および肺炎球菌加熱死菌で刺激後は好中球関連ケモカインであるCKCL1,CXCL2は有意に減少した。 マウスにおいては、MSCs投与により肺炎球菌感染マウスは気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid;BALF)における好中球数が有意に減少した。また、肺におけるミエロペルオキシダーゼ活性が有意に低下した。肺における炎症性サイトカインであるTNF-α, IL-6, GM-CSF、および肺炎球菌の菌量は有意に減少した。さらに組織学的な検討では炎症細胞浸潤の程度は軽減していたが、肺水腫の程度、BALFにおける蛋白濃度、細菌感染により上昇し菌の代謝や増殖に影響するとされるLipocalin2には差はみられなかった。 以上の結果より、MSCsは肺炎球菌肺炎において治療介入となる可能性が示唆された。
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