VZV TK遺伝子変異による薬剤耐性の獲得はそのACVリン酸化能消失に起因するため、迅速かつ簡便にACVリン酸化能を定量化し、これを指標とすることで迅速に薬剤耐性の診断可能な系をの確立を目指した。今年度はin vitroにおいて発現させたVZV TKを用いて、ACVリン酸化能の定量系を開発するための至適条件の検討を行った。現在作製した系を用いて、薬剤感受性レベルとACVリン酸化能の相関性について検証を行っている。 また、薬剤耐性責任変異をデータベース化することで薬剤耐性VZVの迅速な診断系の確立を目指した。昨年度作製したHSV-1 TKを欠損し、代わりにVZV TKを搭載したキメラウイルスについて、まずACVによる阻害効果レベルを確認した。結果、HSV-1よりも本キメラウイルスはIC50値が5~10倍上昇しており、VZVのIC50値と同レベルであった。そこで本キメラウイルスをACV存在下で培養することで、ACV耐性ウイルスを得、これについて遺伝子解析を行い、ACV耐性責任変異についてのマッピングを行った。結果、残念ながらVZV TK遺伝子上には薬剤耐性変異が得られなかったが、VZV TK遺伝子同様薬剤耐性責任変異についてのデータが乏しいHSV-1 DNA上に薬剤耐性責任変異が得られ、この中で5つについてはこれまでに報告のない新規の変異であった。このように、キメラウイルスを用いた系でVZV TK遺伝子上の薬剤耐性責任変異のマッピングをすることができなかったため、現在Error-prone PCR法を用いてVZV TK遺伝子にランダムに変異を導入し、薬剤耐性責任変異および自然多型のマッピングを行っている。
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