糸球体硬化は、腎機能低下に至る“final common pathway”であることから、糸球体硬化病変の進行抑制は腎臓病学の重要な課題である。 近年、糸球体硬化病変形成には、活性化壁側上皮細胞が主な役割を果たす事が明らかにされた。活性化壁側上皮細胞は、糸球体臓側上皮細胞(ポドサイト)の傷害度を反映して出現することも分かっている。本研究は、活性化壁側上皮細胞の誘導因子を同定することで、新たな腎不全治療標的を探索することを目的とした。 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)モデルマウスとしてアドリアマイシン(ADR)腎症モデルを作成し、活性化壁側上皮細胞の出現時期について検討を行い同定した。また、ADR腎症モデルはFSGSモデルマウスとして代表的なマウスモデルであるが、より緩徐なFSGS形成を観察することで活性化壁側上皮細胞出現時期について詳細な検討が可能となることから、平成28年度は、シクロスポリン腎症(CsAN)モデルマウスの作成を試み、最終的にCsA腎症モデルとしての条件を確立した。各々の腎症モデルにおける電子顕微鏡下における観察を行い、ポドサイト傷害を示唆する形態的変化である足突起癒合が有意に増加する時期と尿蛋白との関係性を含めて解析を行った。最終的に、活性化壁側上皮細胞の出現時期およびポドサイト傷害出現時期の関係性について、再現性が確認でき同定することが出来た。平成29年度には、ADR腎症モデルおよびCsA腎症モデルを用いて活性化上皮細胞出現時期に着目したプロテオーム解析を施行した。
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