研究課題
先天性大脳白質形成不全症は中枢神経系の髄鞘形成不全を呈する疾患群だがその遺伝学的背景は多様であり、いまだ確立された治療法はない。近年網羅的ゲノム解析により同定された原因遺伝子には低分子RNAに関わる遺伝子群が含まれていた。申請者らはエクソーム解析により先天性大脳白質形成不全症の家系例からミトコンドリアへ低分子RNAを輸送するタンパクをコードする新規候補遺伝子を同定した。本研究ではさらなる変異症例の検索と遺伝子改変マウスや培養細胞を用いた候補遺伝子の機能解析を行うものである。平成28年度は前年度に引き続き血縁関係のないもう一人の変異保有患者の証明のため、髄鞘形成不全を有する患者の検索を自施設患者について継続したが、候補変異は同定されなかった。本遺伝子による患者が比較的稀であることを示していると考えている。さらに前年度に継続してCRIPSR/Cas9を用いたゲノム編集による遺伝子改変マウスの作成を分子血液学分野の協力により行った。前年度とは別の変異をもつマウスの作成に成功した。この変異は前年度のフレームシフト変異とは異なり非フレームシフト変異(2アミノ酸欠失変異)であるため、比較的酵素欠損の程度が軽いことが期待される。ホモ接合体マウスを作成して、前回同様胎生致死であるか、生仔が得られるか検証中である。さらに前年度立ち上げた培養細胞(皮膚線維芽細胞)によるミトコンドリアでの低分子RNA輸送障害の解析を行い、患者とコントロールでの比較を行った。この結果、患者で輸送障害が起こっていることが示された。前年度、今年度の結果をまとめ、現在論文投稿中(Under Review)である。
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Pediatric International
巻: 58 ページ: 919-922
10.1111/ped.13043