新生児期は生理的に高ビリルビン血症(高ビ血症)を来たし易く、治療を要する高ビ血症は日本人を含めた東アジア人で頻度が高い。また、重篤になると核黄疸を来たし致命的となる。高ビ血症の明確な原因は未だ不明であり、治療を要する高ビ血症を来たす児は多い。 我々はその原因解明を目的として、現在までにビリルビンの抱合酵素であるビリルビンUDPグルクロン酸トランスフェラーゼ(B-UGT)のUGT1A1遺伝子Gly71Arg多型が日本人に頻度が高く、高ビ血症に深く関連していると報告した。しかし前述の多型が新生児高ビ血症のすべてを説明できるわけではない。そこで母乳栄養児におけるGly71Arg多型と母乳不足(体重減少)、高ビ血症の関連に着目し検討したところ、Gly71Arg多型は母乳不足の状況下ではじめて高ビ血症の危険因子になることを発見し、多型を有する児でも栄養状態を改善することで治療を要する高ビ血症を回避できる可能性を明らかにした。 これらの結果を踏まえ、我々はさらなる原因究明のため、肝細胞膜のビリルビン輸送タンパクである有機アニオントランスポーター(OATP)の遺伝子多型と高ビ血症の関連に着目し、満期産母乳栄養児401名におけるOATP遺伝子群の4つの多型と体重減少率、高ビ血症の関連について統計解析を施行した。その結果、これらの遺伝子多型は体重減少率が10%以上の児ではじめて高ビ血症の危険因子になることを報告した。研究は計画より早期に進展し、2015年1月にJournal of Human Geneticsに掲載された。さらに同年11月には第57回日本先天代謝異常学会、2016年5月には日本小児科学会学術集会での研究発表を行った。 その後、母乳栄養児における出生後早期の糖水摂取、高ビ血症の関連について検討したが、糖水補給の有無による高ビ血症の発症率に有意差は認めなかった。
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