研究課題
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症2型(PFIC2)は胆汁排泄に重要なトランスポーター(BSEP)の異常により重篤な胆汁うっ滞性肝障害を呈し、治療に肝移植を要する。本研究では、同疾患の新しい治療薬ターゲットの開発に疾患特異的iPS細胞の利用が有用であるか否かを検討する。本年度はPFIC2患者から採取した血液に山中4因子搭載ベクターを導入し、iPS細胞(PFIC2-iPS)を作製した。PFIC2-iPSはNanogやOCT4を発現し、胚様体形成により三胚葉への分化を示した。従って、PFIC2患者の血液細胞から作製したiPS細胞は未分化性と多分化能を有していることを確認できた。次に、分化段階特異的な液性因子を加えてPFIC2-iPSを肝細胞に分化誘導した。分化開始25日目に肝細胞特異的なマーカーであるアルブミンを発現する細胞が約70%得られ、電子顕微鏡での観察で分化誘導肝細胞間に毛細胆管の形成も認めた。また、PFIC2-iPS由来分化誘導肝細胞ではBSEPの細胞膜における発現が低下しており、胆汁酸排泄アッセイにより毛細胆管内への胆汁酸排泄も低下していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
初年度の目標であったPFIC2患者からのiPS細胞作製と肝細胞分化誘導の確立は達成された。分化誘導肝細胞は電子顕微鏡で毛細胆管構造を認め、質の高い分化誘導肝細胞が得られており、それに続いて疾患iPS細胞由来肝細胞の解析を進めている。
今年度はPFIC2-iPS由来分化誘導肝細胞を用いて、BSEP発現の改善作用を有する化合物のスクリーニングを行う予定である。候補化合物が同定されれば、作用する分子の特定やBSEP発現調節機構に関わる分子の解析へと応用したい。
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