研究課題
今年度は、小児期に耐糖能異常を呈し、小児内分泌科医によって臨床的に診断されたA型インスリン抵抗症の解析を中心に解析を行った。国内6例の臨床的に診断されたA型インスリン抵抗症小児例のINSR遺伝子解析を通じて、4例にINSR遺伝子変異(1種の新規変異を含む)を同定した。これらの変異はいずれもINSRβサブユニットのチロシンキナーゼドメインに位置し、構造解析からリン酸化ドメインの構造変化を起こすことが推測された。既報のINSR遺伝子変異と表現型の解析から、常染色優性遺伝を呈するA型インスリン抵抗症を生じる変異の多くはチロシンキナーゼドメインに位置し、優性阻害効果によって症状を呈する可能性を示した。INSR遺伝子変異陽性例と陰性例の臨床像の比較において、肥満度やインスリン抵抗性の程度での鑑別は困難であったが、家族歴や脂肪肝の有無で鑑別しうる可能性が示唆された。全例においてSmall for Gestational Age (SGA)出生の傾向が見られ、既報を含めた検討から、出生体重SDスコアはインスリン受容体異常症の重症度に比例することを確認し、A型インスリン抵抗症においてもSGA出生が臨床的特徴である可能性を示した。また、変異陰性2例の著明なインスリン抵抗性の原因としてINSR遺伝子変異以外が寄与している可能性が示唆された。今後、インスリン受容体下流の遺伝子や脂肪萎縮症関連遺伝子を含め網羅的な遺伝子解析を行う予定である。
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