研究課題/領域番号 |
15K19603
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山田 剛史 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (90601922)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マクロファージ / シクロスポリン / 線維化 |
研究実績の概要 |
小児ネフローゼ症候群(NS)はステロイド治療が有効であるが、再発を繰り返しステロイド依存となる例も多い。それに対して頻用されるシクロスポリン(CsA)は、高い再発予防効果を有する一方で、腎毒性を有する(CsA腎症)。CsA腎症は、細動脈・尿細管間質病変が主体で、進行に伴い高度な間質線維化を呈する。我々はこれまでに、慢性糸球体腎炎で活性化マクロファージ(MΦ)が腎の組織障害・線維化に深く関与することを報告してきた。本研究は、M2型活性化MΦに着目して、CsA腎症早期診断のためのバイオマーカー開発、CsA腎症の進展機序ならびにその制御法確立を目的としている。 今回は臨床検体を用いて検討した。CsAを2年以上投与された頻回再発型NS症例を対象とし、CsAを投与されていない同症候群症例をコントロールとした。両者の腎生検組織を用い、免疫抗体法にて、CD68(汎MΦマーカー)、CD86(M1型MΦマーカー)、CD163(M2型MΦマーカー)を染色し、各々のMΦ数をカウントした。同様に、α-smooth muscle actin(α-SMA)、I型コラーゲン、connective tissue growth factor(CTGF)を染色した。α-SMA陽性領域、I型コラーゲン陽性領域の面積を計測し、線維化の程度の指標とした。また、各症例のステロイド投与量を算出し、MΦ数、間質線維化の程度との相関を検討した。以上の結果、CsA投与群は非投与群に比べて有意に間質の線維化が進行しており、同部位へのM2型MΦの浸潤を認めた。また、間質の線維化の程度および浸潤したM2型MΦの数は、CsA投与期間およびCsA投与中のステロイド投与量と相関した。以上から、CsAを長期間投与されたステロイド依存性NS患者にみられる腎尿細管間質線維化にM2型MΦが関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の検討で、シクロスポリン使用に伴う腎障害に、M2型マクロファージが関与していることが示された。今後M2型マクロファージに着目して研究を進行させていくことの妥当性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
臨床検体を用いた検討は引き続き行っていく。具体的には、M2型マクロファージ抗原のCD163は可溶性抗原であり、これを用いて尿中CD163を定量し、腎組織所見、臨床所見との関連を検討する。 ラットシクロスポリン腎症モデルを用いて、間質線維化増悪群について、腎組織中のサイトカイン、遊走因子発現をRT-PCR法、免疫組織染色、in situ ハイブリダイゼーション法およびDNAマイクロアレイ法により解析し、シクロスポリン腎症に関わる腎局所のサイトカイン環境、主要なシグナリング経路を明らかにする。 in vitro解析では、ヒト末梢血単球由来マクロファージと、腎固有細胞、血管内皮細胞、シクロスポリンおよびステロイド添加時の各細胞が発現する因子について、特に線維化促進因子を主に、ELISA、Western blotting またはreal-time PCRによる遺伝子解析により同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内出張の精算手続きは年度内に完了していたが、支払いが4月となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
未払い分の旅費は、平成28年4月に支払いが完了している。
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