研究実績の概要 |
小児ネフローゼ症候群(NS)はステロイド治療が有効であるが、再発を繰り返しステロイド依存となる例も多い。それに対して頻用されるシクロスポリン(CsA)は、高い再発予防効果を有する一方で、腎毒性を有する(CsA腎症)。CsA腎症は、細動脈・尿細管間質病変が主体で、進行に伴い高度な間質線維化を呈する。我々はこれまでに、慢性糸球体腎炎で活性化マクロファージ(MΦ)が腎の組織障害・線維化に深く関与することを報告してきた。本研究は、M2型活性化MΦに着目して、CsA腎症早期診断のためのバイオマーカー開発、CsA腎症の進展機序ならびにその制御法確立を目的としている。 平成28年度は以下のことを論文にて報告した(新潟医学会雑誌 130: 341-350, 2016.)。すなわち、CsAを長期投与されたステロイド依存性NS患者において、腎尿細管間質へのM2型MΦの浸潤、あるいは間質MΦのM2型活性化が促進される結果、尿細管間質の線維化が生じ、そこに頻回のステロイド投与が加わることでM2型MΦの線維化促進因子産生が増し、さらに線維化病変の形成が助長される可能性が示唆された。具体的には、頻回再発型NS症例のうち、CsA長期投与群とCsA非投与群で、その腎生検組織を比較検討した。線維化の程度の指標として、α-smooth muscle actin陽性領域、Ⅰ型コラーゲン陽性領域の面積を計測し、両群で比較した。また、各症例のステロイド投与量を算出し、MΦ数、間質線維化の程度との相関を検討した。
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