小児ネフローゼ症候群(NS)はステロイド治療が有効であるが、再発を繰り返しステロイド依存となる例も多い。それに対して頻用されるシクロスポリン(CsA)は、高い再発予防効果を有する一方で、腎毒性を有する(CsA腎症)。CsA腎症は、細動脈・尿細管間質病変が主体で、進行に伴い高度な間質線維化を呈する。我々はこれまでに、慢性糸球体腎炎で活性化マクロファージ(MΦ)が腎の組織障害・線維化に深く関与することを報告してきた。本研究は、M2型活性化MΦに着目して、CsA腎症早期診断のためのバイオマーカー開発、CsA腎症の進展機序ならびにその制御法確立を目的としている。 平成29年度は、さらに多数の症例を蓄積、すなわち、CsA長期投与NS患者およびCsA非投与NS患者を集積し、両者を比較検討した。CsA長期投与群で間質の線維化面積が広く、線維化領域に一致してM2型MΦが浸潤していた。また、M2型MΦ細胞数と、ステロイド総投与量およびCsA投与期間に正の相関を認めた。すなわち、ステロイド投与量が多いほど、また、CsA投与期間が長いほど線維化が進行すると考えられた。ただし、CsA投与開始前のステロイド投与量と線維化に相関はみられず、CsA投与下でのステロイド投与量が線維化と相関していた。 本研究を総括すると、長期CsA投与NS患者では、CsA非投与患者と比べて有意な間質の線維化が認められ、CsA腎症と診断される以前から様々なスペクトラムで間質の線維化が進行していることが分かった。この線維化にM2型MΦが関与しており、CsA投与下でのステロイド投与がM2型MΦを活性化している可能性が示唆された。 今後はin vitroでの解析を進める。MΦにCsAやステロイドを添加し、発現する線維化促進因子を同定し、さらに、臨床上汎用される治療薬を添加し、その抑制作用についても解析を行う。
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