研究課題/領域番号 |
15K19604
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
伊吹 圭二郎 富山大学, 大学病院, 助教 (20566096)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 先天性心疾患 / 発達 / 心理検査 / 頭部MRI検査 / 低酸素 / 高次脳機能障害 |
研究実績の概要 |
近年、先天性心疾患(CHD)の診断および治療の進歩に伴い、複雑CHDにおける生存率も飛躍的に向上したが、一方で、成長と共に神経学的後遺症が高頻度に認めることが明らかになってきた。我々は、CHD児においては特異的な発達障害がみられ、同時に、これらの児では脳磁気共鳴画像(MRI)上、脳容積は正常に比べ減少しており、低酸素の持続と関連があることを報告した。本研究では、Ⅰ.CHD児の1歳、3歳、6歳での精神神経発達の追跡調査を行い、発達障害の特異性を調べ、Ⅱ.術後乳児早期から、MRI撮像で脳容積と拡散異方性を評価し、Ⅲ.MRI所見と周術期因子を含めた背景情報を解析し、精神神経発達の予後予測因子を明らかにすることを目的とする。特に、前頭前野の発達が著しい新生児・乳児早期の脳発達異常と、就学時に明らかになる学習障害などの高次脳機能障害との関連性を解明する。 CHD児に見られる精神発達や行動異常は、全体的な知能は保たれているのにもかかわらず、認知や注意欠陥/多動性,視覚と運動の統合,遂行機能,言語の遅れなど高次脳機能障害にかかわり、発達のプロフィールに偏りがある。しかも、これらの異常は、就学時に初めて明らかになることが多い。CHD児の精神運動発達の追跡調査を引き続き行っており、現在は、学童期の心理発達検査として、WISC-Ⅳを実施し、頭部MRI画像の撮像を行い、脳の機能的、器質的な病因を研究している。 頭部MRI画像解析においては、当教室に解析用のパソコン機器を導入し、よりよい画像解析方法を探求した。研究成果の一部を、2016年3月に行われた富山国際シンポジウムで平岩が発表した。その内容をもとに論文を作成中である。 また、乳幼児期の発達検査結果と学童期のIQとに相関があることがわかってきた。それを日本小児循環器学会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
より良い画像解析方法の検討を行ったため、現在の解析方法が定まるまでに時間を要した。 乳幼児期に発達検査、頭部MRI検査を行った児が学童期に入っており、頭部MRI検査を現在行っている。ただし、対象の児、遠方に在住している、ご家族一緒にいらっしゃる必要などもあり、予定がうまく合わない場合もある。撮像予定としている児のMRI検査はまだ終了していない。
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今後の研究の推進方策 |
乳児早期に開心術、特に単心室群とTGA群を対象に、チアノーゼ性先天性心疾患児を対象とし、Ⅰ.CHD児の1歳、3歳、6歳での精神神経発達の追跡調査を行い、発達障害の特異性を調べ、Ⅱ.術後早期から、MRIで脳容積を側頭葉、前頭葉、後頭葉に分けて測定し、拡散異方性を評価、Ⅲ.MRI所見と発達指数の関係、および、周術期因子を含めた背景情報を解析し、精神神経発達の 予後予測因子を明確にすることである。特に、6歳時の発達検査では、前頭前野の発達が著しい新生児・乳児早期の脳発達異常と、脳高次機能発達のプロフィールの偏りに関して、相関関係の有無を検証する。 今までは乳幼児のMRIを中心に解析していたが、縦断的な追跡調査を行うため、乳幼児期に頭部MRI検査を行った児を、学童期のMRIを追加撮像することとした。縦断的にMRIを行い、脳発達の変化を追うことができる。 画像解析方法に関しては、Unix work stationを使用する予定であったが、さらに解析度の高いアナライズソフトも導入する。また、海馬や偏桃体など複雑な構造のものに関しては、客観性、利便性を検討し、JohnsHopkins大学を中心に開発されているBrain GPSソフトも使用することとした。 CHD児の精神発達の追跡調査としては、BayleyⅢ検査、WISCⅣ検査などの心理検査も引き続き行い、検査対象人数も増やし発達の特異性をさらに明らかにさせていく。 その結果を、国内外の学会や論文で発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
先天性心疾患児の学童期の頭部MRI検査を引き続き行っており、MRI検査費用が必要とである。また、本研究を国内外で発表するための旅費なども必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
単心室、完全大血管転位症の、学童期の心疾患児を中心に、研究に同意してくださった方に、頭部MRI検査を行い、脳の解剖学的発達も研究する。次年度は、約20例を見込んでいる。 7月の小児循環器学会で発表予定であり、そのための旅費が必要である。
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