研究課題/領域番号 |
15K19606
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
村井 宏生 福井大学, 医学部, 助教 (50464566)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 気道上皮 / 気管支喘息 / 小胞体ストレス応答 |
研究実績の概要 |
吸入抗原感作によるアレルギー性喘息の発症や重症化の病態は十分には解明されていない。本研究は1. 吸入抗原刺激による小胞体ストレス応答の誘導機序、2. 吸入抗原による小胞体ストレス応答を介するオートファジー制御機構、3. オートファジー依存性に放出されるアラーミンの喘息重症化との関連を検討することで、吸入抗原による小胞体ストレス応答を介したオートファジー制御機構とその結果惹起されるアラーミンの産生メカニズムを解明し、喘息発症や重症化の予防や治療標的の同定を目的として行っている。 今年度は、吸入抗原刺激による小胞体ストレス応答を介したオートファジー制御機序とそのシグナル伝達経路の解明を目的とした。そのために、喘息の発症や重症化などの病態に関与する気道上皮細胞の反応にの一つに小胞体ストレス応答が関係し、吸入抗原の性状より異なる自然免疫応答が惹起されるという仮説の元、a.)ミスフォールドタンパクの合成抑制 (eLF2α のリン酸化をウエスタンブロット解析) b.)小胞体関連タンパク分解 (ERAD関連タンパクであるXBP1,DDIT3の発現をRT-PCRで評価)。を行った。結果として真菌抗原であるアルテルナリアは、小胞体関連タンパク分解(ERAD)関連タンパクであるXBP1,DDIT3の発現が増加した一方で、preliminary data ではあるが、ダニ抗原であるD.Feriniae(以下D.F)はXBP1, DDIT3の発現が低下し異なるストレス応答が引き起こされている可能性が示唆された。また、D.F 刺激により気道上皮細胞のeLF2αのリン酸化は促されなかったものの、Th2サイトカインであるIL-13, IL-4の存在下においてはD.F刺激を受けるとeLF2alphaの著明な発現低下を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定通り、ミスフォールドタンパクの合成抑制 (eLF2α のリン酸化をウエスタンブロット解析) や、小胞体関連タンパク分解 (ERAD関連タンパクであるXBP1,DDIT3の発現をRT-PCRで評価)は行うことができたものの、その前段階である小胞体ストレス応答を判別するための刺激時間の至適条件の設定に時間がかかったこと、ダニ抗原刺激による分泌蛋白の解析に時間を要したことより上記区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
現在preliminary study として、D.F 刺激により気道上皮細胞のeLF2αのリン酸化は促されなかったものの、Th2サイトカインであるIL-13, IL-4の共刺激下においてD.F刺激を受けるとeLF2alphaの著明な発現低下を認める可能性があるという結果を認めている。今後は本結果を更に進めIL-13, IL-4の存在下でどのような分泌蛋白の変化を認めるかをDIGEを用いた2次元電気泳動を行い、そのタンパク質を同定する。その後、オートファジー調節に関わる小胞体ストレスの主要シグナル伝達機構siRNAを用いて、気道上皮細 胞上の inositol-requiring enzyme (IRE)1、PERK、ATF6 などの小胞体ストレス応答の主要分子をノ ックダウンし、各種吸入抗原によるオートファジーマーカーと同定した分泌タンパクの変化をウエスタンブロッティングを用いて評価することで、吸入抗原による小胞体ストレス応答がオートファジー活性化シグナルの上流に 位置するかを検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初行う予定であったダニ、アルテルナリア抗原以外の抗原について行うことができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
ダニ、アルテルナリア抗原に絞る一方で、2次元電気泳動による分泌蛋白同定に使用する予定である。
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