研究課題
新生児は産後数週間で腸管上皮細胞のタイトジャンクションタンパク質の発現が促され腸管バリア機能を獲得する。しかしながらそのメカニズムはまったくわかっていない。近年、腸内細菌叢が腸管粘膜免疫系の発達に重要な役割を果たすことが明らかとなってきた。本研究の目的は、新生児の腸内細菌叢の形成と密接に関わっている母親の腸内細菌叢が、腸管上皮細胞のバリア機能の発達に関与することを証明するものである。本研究成果は、腸内細菌叢と腸上皮細胞の新たな関係を示すとともに、乳幼児期のアレルギー性疾患や腸管感染症の予防法の開発に役立つと考えられる。まず、腸上皮細胞のタイトジャンクション構成因子の発現が週齢によって異なるか確認した。胎児期-E16d、新生児期-1~3d、乳児期-1w、成獣マウスから腸上皮細胞を採取し、タイトジャンクション構成因子のRNAの発現量を解析し、週齢が進むにつれ、発現量が高くなることを示した。次に、母親マウスの腸内細菌叢を変化させることで、子供の腸上皮細胞のタイトジャンクション構成因子の発現が異なるか確認を試みた。しかしながら、現施設ではgerm-freeマウスの作製が困難、また、母親マウスに抗生物質を投与したところ母親マウスが衰弱し出産が困難であった。そこで、腸内細菌叢を変化させるプレバイオティクスやプロバイオティクス、ポリフェノールを投与し、腸上皮細胞のタイトジャンクション構成因子の発現を解析した。スクリーニングのため、成獣マウスにこれらを2週間投与し、糞便を採取し、腸内細菌叢が変化したマウスの腸上皮細胞のタイトジャンクション構成因子の発現を見た。ある特定の乳酸菌とポリフェノールの一つであるレスベラトロールを投与した際に一部のタイトジャンクション構成因子の発現が上昇した。これらは、新生児の腸管上皮細胞のバリア機能の発達にも関与している可能性があると考えられる。
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Cell Mol. Gastroenterol. Hepatol.
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http://dx.doi.org/10.1016/j.jcmgh.2017.03.010
http://www.med.yamanashi.ac.jp/clinical_basic/para0imm/kenkyuu/kenkyuu.php