研究課題
ヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)は乳幼児に初感染し、突発性発疹症を発症する。突発性発疹症は予後良好な疾患であるが、その一部に脳炎/脳症を引き起こし、重篤な神経学的後遺症を残すことが臨床現場で大きな問題となっている。我々は、In vitroでHHV-6Bの宿主レセプターがCD134分子であることを世界で初めて同定し、HHV-6Bの感染成立に大きな役割があることを明らかにした。実際にヒトのHHV-6B感染T細胞においてCD134分子が高発現している可能性が高いが、今までにこれを証明した報告はない。本研究の目的はHHV-6B初感染児のT細胞でCD134が高発現していることを明らかにすることである。研究には0-4歳までの発熱患者より採取した末梢血、血清の余剰検体を使用した。まず末梢血より末梢血単核球細胞を分離し、一部は抗CD134抗体を用いてフローサイトメトリーを行いCD134分子発現の有無を確認した。また一部はDNAを抽出し、Nested PCRにてウイルスDNAの検出を行った。HHV-6B抗体価は血清を用いて測定し、HHV-6B DNAが陽性、抗体価が陰性の場合にHHV-6B初感染と診断した。延べ230検体を解析し、HHV-6B初感染と診断したのは30例、このうちCD134分子の高発現を認めたのは1例のみであった。活性化されたT細胞表面に発現するCD134分子はHHV-6Bと結合後、エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれ、ウイルスは細胞内で増殖したのち血液中に放出されウイルス血症となる。今回、発熱期に検体を収集したが、この時期はすでにウイルス血症となっているため、CD134分子は細胞内に取り込まれており、CD134分子の高発現をとらえられなかった可能性が考えられた。
すべて 2016
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Journal of Infection and Chemotherapy
巻: 22 ページ: 593-598
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2016.05.010