研究課題/領域番号 |
15K19616
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
平出 智裕 島根大学, 医学部, 医科医員 (40638540)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 薬剤抵抗性白血病 / FLT3/ITD / RUNX1 |
研究実績の概要 |
受容体型チロシンキナーゼであるFLT3に生ずるFLT3/ITD変異は、10-15%の小児急性骨髄性白血病(AML)患者に見られ、予後不良因子となる。これまでにいくつものFLT3/ITDを標的とした治療薬が開発されてきたが、いずれも有効なものはこれまでのところない。 その理由として、これら治療薬を長期に使用することで、FLT3/ITD陽性AML細胞が薬剤抵抗性となり、再発するからである。私たちは、FLT3/ITDが薬剤抵抗性となる機序と、その薬剤抵抗性に打ち勝つための新たな治療戦略となる基礎研究を行った。 まず始めにマイクロアレイを用いてFLT3/ITDが、造血細胞の主に分化に関わる重要な転写因子であるRUNX1の発現を上昇させることを見出した。そこでFLT3/ITD下におけるRUNX1の機能解析を行った。 まず、FLT3/ITD陽性細胞でRUNX1をknock downすると、その異常な細胞増殖が抑制され、分化が促進され、自己複製能を抑制することができた。これはつまり、FLT3/ITDはRUNX1の発現を上昇させることで、異常な細胞増殖を引き起こし、分化を抑制し、自己複製能を高めていると考えられる。 更に、FLT3/ITD阻害剤に抵抗性となった細胞においても、RUNX1をknock downすると同様に細胞増殖が抑制され、分化が促進され、自己複製能を抑制することができた。 そのため、RUNX1は、薬剤抵抗性となったFLT3/ITD陽性細胞においても治療標的となりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標としていたFLT3/ITDが薬剤抵抗性となる機序と、その薬剤抵抗性に打ち勝つための新たな治療戦略となる基礎研究を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
上記の実験はマウスの細胞を用いた試験管内の研究であった。 そこで、FLT3/ITD白血病マウスモデルを用いて、RUNX1のknock downが新たな治療標的となりうるかを確認する。 また、ヒトAML白血病モデル細胞においても、同様にRUNX1のknock downが治療標的となりうるかを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要とした物品が想定していたよりも少なく済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験物品の購入、情報収集のための学会参加。
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