急性リンパ性白血病(ALL)は小児がんの約40%を占める。近年の層別化治療により治療成績は大幅に向上した。しかし、約20%の症例が再発し、再発例には既知の予後不良因子(Philadelphia染色体)を持たない例が存在する。我々は、JAK2 遺伝子変異とCRLF2 の高発現を伴う再発細胞株2株を樹立した。この2株は、抗がん剤と酸化ストレスに極めて強力な抵抗性を獲得していた。本研究では、JAK2変異-CRLF2高発現の標的分子と悪性化経路を特定することを目指している。 既存経路のJAK2-STAT5系に対して、JAK2選択的阻害剤(ルキソリチニブ)および特異的siRNAにより機能をノックダウンした。継時的に細胞を回収し、核酸抽出・タンパク抽出を行い以降の解析に供した。up-regulate された遺伝子群はシグナル伝達に関連する遺伝子が多く見られた。得られたRNAはリアルタイムPCRを用いてバリデーションを行った。さらに、TSLP刺激により影響を受け得るシグナル経路としていくつかの論文で報告されているPI3K-mTOR系により活性化される AKT や MAPK 経路のERKの活性化についても検討を行った。しかしながら、著名な活性化は見いだせず、TSLPの発現との相関性と感受性は見いだせなかった。マイクロアレイの再解析により、CRLF2高発現を伴う再発細胞株2株は極めて似通っていた。これは同一患者由来の初発と再発であり、同じクローン由来と推察される。CRLF2高発現はTSLP刺激によるB-ALLの抵抗性と直接の関係は見いだせなかった。
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