研究実績の概要 |
自己炎症疾患では、周期性発熱や関節炎の他、血管炎やそれに伴う動脈硬化がみられる。また成人の動脈硬化では、NLRP3 inflammasomeによる炎症が重要な要因である。我々は、2014年にCINCA症候群において幼少期から動脈硬化の所見が見られることを報告した。自己炎症性疾患における血管炎はマクロファージなど血球の活性化がその機序と考えられているが、血管内皮細胞(EC)や血管平滑筋細胞(VSMC)など血管壁を構成する細胞自体を詳細に検討した報告はない。これらの細胞もautonomousな炎症を引き起こす遺伝子変異を持っているため、動脈硬化に関与している可能性がある。自己炎症性疾患由来iPS細胞を用いて、ECおよびVSMCへ分化誘導を行い、血管炎・動脈硬化の病態解明を行った。 CINCA症候群はNLRP3遺伝子の変異を持ち、IL-1βの過剰産生を来す重症の自己炎症性疾患である。体細胞モザイクのCINCA症候群患者由来iPS細胞を用いて、ECおよびVSMCへと分化誘導する系を確立した。誘導した細胞は特徴的なマーカーを有し、また今後の実験に十分な細胞数を確保できた。ECはtube formationやLDLの取り込み、サイトカイン産生などの機能を有していた。得られた細胞を、炎症性サイトカイン、LPSやATP、Silicaなどで刺激し、Mutant type由来細胞とWild type由来細胞とを比較した。しかし炎症性サイトカイン産生能力や、VCAM-1, ICAM-1, E-selectin, P-selectinなどの白血球接着因子の明らかな差は認めなかった。iPS細胞由来のECおよびVSMCのNLRP3発現は、HUVECやHASMCなどのprimary細胞に比べ乏しい事から、分化系の見直しと、primary細胞でのNLRP3 inflammasomeの機能を評価している。
|