我々はCADM1、GPR37、GPR85 等の遺伝子にASDの 病因と考えられる変異を報告した。シナプス接着蛋白CADM1の解析では変異を導入した培養神経細胞で変異蛋白により小胞体ストレスが誘導され樹状突起の伸長が妨げられた。また、CADM1 ノックアウトマウスの行動解析でASDの主症状を完全には再現できなかったことから、遺伝子変異によるシナプス蛋白のLoss of functionのみならず、遺伝子変異が誘導する小胞体ストレスがGain of function としてシナプス機能障害に関与すると推定し、以下の計画で研究を実施した。 (1) ASD 病因遺伝子変異が小胞体ストレス誘導へ与える影響の解析:ASD 病因遺伝子変異を持つ患者リンパ芽球に、小胞体ストレス 誘導試薬を添加し培養後、回収した細胞を用いて小胞体ストレスマーカーの発現を解析し、小胞体ストレス感受性を検出する方法を確立した。CADM1(Y251S)変異を持つ患者リンパ芽球で小胞体ストレス感受性解析を行った結果、遺伝子変異を持つリンパ芽球は持たないリンパ芽球と比較し、小胞体ストレス感受性が高かった。 (2) ASD 病因遺伝子がシナプス機能に与える影響の解析:ASD 共通病態としてシナプス形成不全、シナプスバランスの乱れを想定し 、病因遺伝子CADM1とシナプス形成、足場蛋白との結合の有無などの関連を改変マウス脳組織を用いて解析し、CADM1変異マウス脳では、抑制性ー興奮性シナプスバランスが不均衡であることを同定した。 (3)新たなASD疾患関連遺伝子変異の同定:セクレチン受容体(SCTR)遺伝子でASD疾患関連変異を同定した。またアレーCGHを用いてCNV同定を行った。
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