1.RNAシークエンスによるT-ALLの新規ABL1融合遺伝子の同定およびRT-PCRによる確定 白血病細胞株の樹立がうまくいかなかったため、凍結保存してあった患者の診断時の骨髄細胞からtotal RNAを抽出し、RNAシークエンスを行った。それにより、T-ALLの新規ABL1融合遺伝子のパートナー遺伝子として、1q21.3に存在するubiquitin associated protein 2 like (UBAP2L)遺伝子が同定できた。その後、RT-PCRを行い、UBAP2LとABL1遺伝子の融合遺伝子であることを確認した。UBAP2L遺伝子のexon24とABL1遺伝子のexon2が融合していた。 2.UBAP2L-ABL1融合遺伝子のクローニング、発現ベクターへの挿入および増幅 RT-PCRと制限酵素切断、ライゲーションによって、UBAP2L-ABL1融合遺伝子の全長をクローニングすることができた。クローニングしたUBAP2L-ABL1融合遺伝子をレンチウイルスベクターに挿入した。その後、大腸菌に導入して増幅した。 3.マウスIL-2依存性血球系細胞株CTLL-2の培養 マウスIL-2依存性血球系細胞株CTLL-2を培養した。当初エレクトロポレーションによる細胞株への遺伝子導入を予定していたが、UBAP2L-ABL1融合遺伝子をレンチウイルスベクターに挿入したため、ウイルスベクターを用いた細胞株への遺伝子導入が可能となり、遺伝子導入が容易となった。今後はUBAP2L-ABL1融合遺伝子のCTLL-2への遺伝子導入を行い、機能解析を行う予定である。また、その解析結果を2019年10月の日本血液学会で発表する予定である。UBAP2L遺伝子の白血病発症への関与の報告はこれまでになく、この融合遺伝子の機能解析を行うことは、白血病全体の治療戦略を立てる上で非常に意義がある。
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