Duchennne型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy: DMD)に対する根治的治療の一つとして、mRNA上のナンセンス変異を読み飛ばしジストロフィンを産生させるナンセンスリードスルー誘導治療の開発が進んでいる。一方で、生体内にはナンセンス変異が存在するmRNAを積極的に分解するナンセンス変異依存mRNA分解(nonsense-mediated mRNA decay: NMD)という機構が備わっており、未熟終止コドン(premature termination codon: PTC)を有するmRNAを分解することで異常なmRNAとタンパク質を排除する。 しかし、リードスルー誘導治療の標的であるナンセンス変異を有するmRNAに対するこのようなNMDの影響は、リードスルー誘導治療の効果という面においては、 その有効性を妨げている可能性がある。本研究の目的は、ナンセンス変異を有するDMD患者においてNMDを制御し得ることを明らかにすることである。 本研究において、初めにジストロフィン遺伝子微小変異を同定するシステムを構築した。本研究を遂行するためにはナンセンス変異症例を同定することが不可欠であるが、ジストロフィン遺伝子が巨大であるため、ナンセンス変異などの微小変異を同定することが困難である。研究代表者は、次世代シークエンサーおよび直接塩基配列解析法により、非侵襲的に微小変異を同定するシステムを構築した。そして、多数例の解析を行い、その中からナンセンス変異症例を同定することが可能であった。次に、筋組織におけるmRNAの定量に関して検討を行い、蛍光シークエンサーによって判定量するシステムを構築した。現在、これらのシステムを用いて、当初の計画を継続している。
|