研究課題/領域番号 |
15K19642
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
貴田 浩志 久留米大学, 医学部, 助教 (80529454)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Rett症候群 / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
Rett症候群(RTT)は、MeCP2遺伝子変異を主因とする小児の中枢神経障害であり、その発症機構の解明や治療法の確立が切望されている。これまでに申請者らは、MeCP2欠損マウスの不整脈の病態メカニズムを解析する過程において、心臓及び中枢神経系に発現する種々のイオンチャネルの発現異常を見出している。そこで、MeCP2欠損マウス、及びES/iPS細胞をRTT動物、細胞モデルとして、中枢神経系におけるイオンチャルの発現や機能変化が、RTT病態に及ぼす影響を解析し、RTT病態機構の解明、イオンチャネル作用薬の利用による治療法の開発を目的として研究を進めている。計画初年度の今年は、SasaiらのSFEB法(Serum-free Floating culture of Embryoid Bodies-like aggregates)に若干の改変を加え、RTTモデル(MeCP2欠損)ES細胞から大脳皮質系の神経細胞の分化誘導を行なった。その結果、マウスES細胞のMeCP2の有無にかかわらず、様々な神経分化マーカーを発現する神経細胞の高効率な分化誘導に成功した。また、この分化誘導法でMeCP2欠損、野生型ES細胞をそれぞれ異なる6クローンずつ調整し、誘導開始後、6日目、10日目の細胞凝集塊からRNAを抽出し、定量PCRにて解析した。その結果、イオンチャンネル分子をはじめとする幾つかの遺伝子の発現がMeCP2欠損ES細胞で変化することを見出した。現在、MeCP2欠損、野生型ES細胞を35日間分化誘導した神経細胞の電気生理学的な解析を行ない、発現変化が認められるイオンチャンネル分子のRTT病態における役割を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にして高効率な神経分化誘導に成功し、ターゲットとなるイオンチャネルの同定ができたため。
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今後の研究の推進方策 |
ES細胞由来神経細胞から抽出したRNAの神経分化マーカーならびにイオンチャネル関連分子の発現の解析および電気生理学的な膜特性解析は継続して行う。病態への関与が疑われる遺伝子は、プロモーター領域のCpGメチル化状態を解析し、ChIP 法を用いた MeCP2 によるエピジェネティックな転写調節機構の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
分化誘導した神経細胞の遺伝子発現解析にDNAマイクロアレイなどによる解析を予定していたが、試料の純度が不十分で、精製が必要と判断し、今回は見送ったため、若干の繰り越しが発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
より精度を高めた細胞試料を用いて、マイクロアレイや次世代シーケンサによる解析を行う予定である。
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